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2018年08月06日

続報:東京医大問題への医師の声――医師たちが医療現場で直面した女性差別の実態

日本中、そして世界中で批判が拡大している「東京医大の女子受験生一律減点問題」。緊急アンケートによる医師たちの意見を紹介した前回の記事では、63.7%もの医師が東京医大の差別的な対応に一定の理解を示したことに大きな反響が寄せられました。しかし、医師たちの回答を紐解いてみると、医師たちも決して男尊女卑な「ジェンダー差別主義者」というわけではなく、過酷な勤務環境や、不当な差別もまかり通る異常な状況に慣れ、感覚が麻痺しているかのような印象を受けたのも事実。では、医師たちをそんな諦めにも似た境地に追い込む実態とはいかなるものなのでしょうか。医学部、そして医療現場で直面した女性差別の実態を指摘する声たちを紹介します。

Q. 医学部入試や医学生時代、また医師になってから受けた女性への不当な差別・扱いがありましたら教えてください。

入試の面接で「なんで女の子なのに医学部受けようと思ったの?あなたの高校なら別に工学部とかでもいいじゃない。あなたのお母さんみたいな生き方もあるでしょ?」と言われた。(産婦人科)

 

現役で東京医大を受験し一次は合格。二次の面接の際、母と死別している私に面接官が「あなたはお母さまがいませんが将来どのように仕事と結婚・出産を両立させるの?」と聞かれました。結婚した相手の母親に協力してもらったり、勤務を調整できるような実力をつけ、職場と相談しながらやっていきたいと折れそうな気持ちに歯を食いしばってこたえました。鼻で笑われました。そして「まあ、そんな風にいくでしょうかね」と。そのせいとは思っていませんが不合格でした。(麻酔科)

怒りに震えるというより、悔しさで涙が出そうになる心ない言葉。志を踏みにじるような配慮に著しく欠ける言葉が、女子受験生に投げかけられていたかと思うと、胸が引きちぎれられる思いです。こうした声をみると、女子受験生を不利にする対応は多くの大学で行われていたのではないか・・・との疑念を抱かずにはいられません。

女性だけ医局説明会から帰らされる、実習で無視される
研修先、入局先選びでも不当な女性差別

臨床実習で整形外科を回った時に、志望科であることをアピールし、色々勉強したかったが、担当医が全く取り合ってくれず、空気のように扱われた。でも同じグループの男子は特に志望科でもないのに、色々させてもらっていた。(この対応もきっかけとなり志望科は変えました)(産婦人科)

 

外科系の医局は女子というだけであまり熱心に勧誘されることがなく、悔しい思いをしました。外科系の医局説明会に行って、入局に関する大事な話をする前に女性だけ先に帰らされたこともありました。(外科)

 

臨床実習では、一部の外科系の科では、医局に女性がいないのを目にし、女子学生は全く入局勧誘されなかった。臨床研修医の時、女性研修医が大嫌いな指導医がいて、最初の顔合わせの時から全く指導しない、という態度を取られた。指導を受けないわけにもいかないので食い下がったが、結局その指導医からはほぼ指導を受けられず、書いたカルテを勝手に処分されるなどの対応を取られた。周囲は大体のことを把握していたと思うが、その指導医の行為を黙認していた。 (産業保健)

 

初期研修が終わってあるブランド病院の面接を受けた時、私が結婚間もないことを知り、出産したらどうする、みたいに聞かれてその時点でダメだと悟った。結局大学医局に入ったが、後で医局の先輩医師がその面接を受けた病院の科のトップの先生と知り合いで話しているところに居合わせ、「あの年は本当に(採用に)迷った」と言っており、間違いなく女性医師であることがマイナスになったと確信しました。(放射線科)

 

当方は有名病院だが、研修医を普通に採用すると女性優位になってしまうので、一時期女性数を減らしたというのは事実としてあったそうだ。本来なら男女枠として設定するか平等にすべきだと思う。(脳神経外科)

信じられないようなエピソードの数々。驚くのは、「無視」「いないものとして扱う」という幼稚な対応が散見されること。何の落ち度もない人を「女性だから」という理由だけで、その存在を否定するなんて、理不尽すぎます。そして、そんな不当な扱いに慣れてしまった女性医師は・・・

研修医の頃に男性の指導医から「女はどうせ結婚して子供産んだら仕事辞めるんだから(女子を医学部に合格させることは)税金の無駄だ。女を合格させるくらいなら、少々馬鹿でも文句言わずに働く丈夫な男を繰り上げ合格させた方が良い」「女医は(子供産んだら)朝来ない。夕方は早く帰る。当直しない。子供が熱出した、と突然休む。その穴埋めをしてるのはいつも男。これ以上女医の割合が増えたら困る。」とか散々言われていたし、確かに夕方早く帰ったり突然休むママさんを戦力に数える事が出来なくて、現場のやり繰りが出来ないのを散々見てきた(つまり働ける独身女医と男の医者が死ぬほど働く)。こういった発言は何度もされたし、「どうせ教えても無駄になるんだから、女のお前には何も教えてやる気にならない」と面と向かって言われたりした。余りにも言われ続けたので、自分でも「結婚や出産で戦力外になる可能性もある」と思うと特別な経験が出来る機会(同期全員は無理だけど、半分くらいは貰えるチャンス)を本当は挑戦したいのに辞退したりした。(科目非開示)

不当な扱いが常態化した結果、自分で自分に制限をかけてしまう。「呪い」をかけられているとしか思えない状況に陥るのです。

マタハラ、昇進の機会損失、無給扱いに解雇
女性医師を取り巻くいばらの道

研修医の時に妊娠しました。産休ギリギリまで当直もやり、みんなと同じように勤務したのに、ことあるごとに「研修医なのに妊娠するなんて」「だらしない」などと言われました。初期に切迫流産で数日休んだ時には「流れてしまえばいい」とまで言われ、どうしてここまで言われなければいけないのかと悲しかったです。(内科)

命を救う現場の最前線にいる医師が、命の誕生を喜べない・・・それどころか、産まれてこないことを望むような言葉を投げかける――こんなことが起きているという事実へ怒りを覚えずにはいられません。しかも、こちらの先生、2002年に医師免許を取得された先生。2000年を超えても、こんな暴挙が許されているなんて、医療現場は意識が一般社会よりも数段遅れていると言わざるを得ません。

妊娠をつげたらあからさまに嫌な顔。当直できないならやめてくれ、家庭にはいれば、と同級生男子にいわれた(内科)

 

妊娠し産休育休の取得を希望した際に、常勤医から非常勤医にされた。常勤医で居続けるためには、3ヶ月以内の復職を院長直々に求められた。初産であり出産そのものに不安があったため、3ヶ月以内に復帰する約束が出来かねたため、非常勤医となった。仕事内容は変わらないが、お給料が半分になった…。(外科)

 

子供がいるからと出張病院から拒否されました。チャンスがくるまでバイトで粘りました。(内科)

マタハラ、子持ちへの不当な扱いの事例は枚挙にいとまがありませんでした。さらには、結婚・妊娠のタイミングまで管理されている女性医師もいるようで・・・

結婚や出産はちょっとまってほしいと言われている(人手不足で)。月経困難で、緊急手術に入れそうになかったとき、理解のない医師からは非難・笑いのネタとなった。「腹痛でオンコール変わってくださいなんて、俺だったら明日からクビですね笑」(心臓血管外科)

女性医師であること、子どもがいることを理由に昇進の機会を逸すること、それどころか給与の激減や職を失うような事態に見舞われる女性医師も多いようで・・・

(医師である)夫が上司から、妻も医師で子供が3人いることを知っていてもなお「男は家庭を犠牲にしても働かなくてはいけない」と言われた。仕方ないので子供が体調を崩せば自分が休んで対応した。その結果、常勤で勤めていた病院を出勤日数不足として解雇されてしまった。退職金をもらえる年限を満たしていたので請求したが、産休・育休と欠勤を差し引き、年限不足と言われ退職金の支払いを拒否されたのは未だに納得行かない。(内科)

 

非常に優秀で努力家の後輩がNICUで勤務しており、実質上キーパーソンであったが、女性であるがために役職がつかず、さらに若いの男性医師が先に昇進した。以前にも優秀な女性の先輩も同じことがあったらしい。(小児科)


大学病院は医者の給料が低すぎる。時間外、休日にバイトに行かないといけない仕組みになっており、女医が子育てしながら時短で働くと、手取り15万以下になることもザラ。病院によっては専門医取るために無給で働かせているところもあり、友人は無給で働いてるので専門医取ったら辞めるってずっと言ってます。(小児科)

女性医師の夫の7割は男性医師という状況。過酷な医療現場でキャリアを断念するのを女性医師に強いるというのも、女医版マミートラックと言えるのではないでしょうか。

医学部、医療現場でのジェンダー差別の実態、いかがでしたでしょうか。少しずつ状況は改善されているとはいえ、まだまだ不当な扱いがまかり通っている医療現場。異常な状況が常態化し、それをおかしいと気づけなくなっている状況も垣間見えてきました。やはり、今回の問題の根本には、フルコミットが難しくなる時期が出がちな女性医師を不当に扱わざるを得ない「医師の過酷な勤務環境」が前提となっている模様。一連の東京医大問題が「差別はよくないね。入試では公平に」といった単純な結論に帰結することなく、「医師の働き方」を根本から見直す契機となることが求められるのではないでしょうか。そこで、次回は医師からの「働き方改革提案」をお届けします。複数主治医制、医師免許のいらない医師の仕事の他職種への分業化、病院機能の集約化に患者教育、当直引き受け手不足解消のアイデアまで、医師たちのオピニオンをご紹介します。

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文/joy.net編集部

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