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2018年08月07日

東京医大の差別入試問題――大学病院で女医は厄介者なのか。ある現役女性医師の考察

東京医大の女子受験生一律減点問題を受け、joynetコラムでもおなじみの整形外科医・井上留美子先生が複雑な思いを寄せてくださいました。

私が大学受験したころは、女医の医学部合格枠がとにかく少なかった!それが、点数操作なのかどうかは知りえませんが、女子が受かりづらいのはあたり前の時代。私より成績の悪かった男子同級生たちが、私の落ちた大学へ合格していたのは、いまだに記憶に新しく根には持っていないといったらうそになります・・・(笑)。大学入試の枠を決めたり点数操作している幹部の中には女医はいるのでしょうか・・・。まだまだいろいろな情報が漏れ出てきそうな予感がしますね。

大学病院と女医の働き方を考えると、色々な思いが頭をよぎります。先人で、今よりもっと厳しい時代を生き抜いた女医は、どうやったって強くならざるを得ません。私が研修医になった時ですら、医局の更衣室も、当直室だって女医用に整備もされておらず、論文完成のために、男性医師と共に、医局に段ボールを引いて寝ている女性医師だっていました。

毎回議題になるセクハラ問題も、今ほど過敏に守られてない無い時代です。私にいたっては、抱きついてくる先輩や酔っぱらって吸い付いてくるやつらはコテンパンに出来たので、大きな問題なく過ごしてこられました(笑)。20数年前、女医は自分の価値は自分で守り、外科系女医は一致団結して、危ない男性医師の情報・女医得情報なども共有していました。思い返せば、今の時代ではセクハラ問題勃発になること間違いない事が多発していました。

私の医局で、女医として大変だったのは、(以前のコラムでも書いたように)医局初の妊娠・出産でした。切迫早産になって初めて当直免除、放射線オペ免除・・・。大きなおなかでの病棟回診はとても大変でした!(狭いベッドとベッドの間に入れなかった!)でも、外科系医局は男性が多いからか、切迫早産の診断書に対する反応は過敏で、不憫に思ってくれる方もたくさん。当直も免除され外来業務だけにしていただいたのです。その時、皮膚科だったか、女医比率の多い医局の方が甘くなかった事に、恐れおののいたのは覚えています。厳しい時代を乗り越えてきた女医が上司だと、女医の求めるレベルが高い事納得できます。

医師は医科大学からしか生まれません。そして以前は医師が余っているといわれた時代があったので、女子学生を多くとる時代があったと記憶しています。それは、女医は妊娠・出産で医師をやめていくので、医師過剰解決の糸口になるのでは、と考えた人がいたからです。でも、それが医師過剰問題の解決には繋がらなかったため、徐々に女子学生を取る率が減少してきた、と聞いています。

大学は働き続ける医師が欲しいのは当たり前。せっかく育てた医師が大学を去りやめていってしまっては大学の発展にはつながらないのは容易に想像できますし、できれば母校卒業生で母校を発展させたいと思えばなおさらです。臨床で例えれば、女医が子育て中に、夜中のオンコール対応が男性同様にできるのかと言えば難しいでしょう。女医全員が股関節脱臼を無麻酔で整復できるか、と言われたらYESとは答えづらいのです(ひ弱な男子もたくさんいるけどね)。どうしたって男性と女性が同等には働けないことは事実です。男女平等は良い意味でもあり得ないのです。

一方で、じゃあ男性医師が大学にずっと残るかというとそれも疑問です。ある程度の年齢になると、論文の数や臨床スキル、教授との折り合いの関係で医局を去らざるを得ない医師がいるのも事実です。客観視してみると、男性医師の方が権力争いすごくない?そうやって大学を去った男性医師はやはり働き方を変えて医師を続けていくのです。

そして、大学や世間にわかってもらいたいことは、女医は仕事を辞めたいとは思っていない、という事です。大学側は、大学の発展を考えるならば、女医の要望を理解すべきです。女性がキャリア継続可能な制度を整えれば、妊娠・出産が止める理由にはならないことがわかるでしょう。私のように、アラフィフになっても大学にもどってやり残したことをやりたいと思う人間がいるように、大学の発展のために尽くしたいともっている女医はたくさんいるのです。

こうやって考えてみると要するに性差よりもっと重要視しなければならないことがあるような気がします。先輩男性医師が、『大学が魅力的で、皆が仕事継続できる環境を提供できれば良いが、それをする自信がないから性別の責任にするのでは?』とおっしゃっていました。すごく納得・・・。

最後にもう一点。受験の点数で合否を決めたら・・・恐らく女性率が高くなることでしょう・・・(笑)。我が大学の卒業式も成績優秀で表彰された3名は女性でした。性差ばかりでものを考えず、個性も考慮し、適材適所、個人にあった働き方が選択できる制度つくりが一番の理想なのでは?

井上留美子 (いのうえるみこ)

1971年東京生まれ、東京育ち。聖マリアンナ医科大学卒業・研修。整形外科学教室入局。長男出産をきっかけに父のクリニックの院長となる。日本整形外科学会整形外科認定医、リハビリ認定医、リウマチ認定医、スポーツ認定医。

自分の健康法である笑うことをモットーに予防医学としてのヨガに着目し、ヨガインストラクターに整形外科理論などを教えている。シニアヨガプログラムも作成し、自身のクリニックと都内整形外科クリニックでヨガ教室を行う。現在は二人の子育てをしながら自身のクリニックにて院長業務を行っている。 

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