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2018年08月27日

「その悩み、当直室で解決します!」スカッとまあや/Dr.まあやの「今日も当直です」 第25回

joy.netで人気のDr.まあやが、女性医師の悩みにお答えします。今回のテーマは「老害」。日進月歩で変化する医療の世界だからこそ、世代の差が顕著に出てしまう…。アンケートに寄せられた症例を当直室で解決します。
※結婚、育児など、一部解決できない悩みがありますのでご了承ください。

お悩み:年配のドクターについていけません・・・。

<相談員1>
やたら消毒液を塗布する年配医師。いまどきは、外傷などの創部にむやみに消毒液を塗布するのはよくないとされています。常識ですよ?・・・とは言えず・・・。患者さんに申し訳ない気持ちでいっぱいになります。(一般外科)

<Dr.まあや>
あー、あー、ありますね消毒に対しての概念が変わった件ですよね〜。大学病院では、常に新しい情報共有の場があるんですが、開業医の先生は地域の医師会の集まりとか研究会に積極的に参加して、他科の情報も含めて知識をアップデートしていかないといけないところ、どうしてもそれができてなくって、昔のやり方のままになってしまったりするんですよね。薬の情報なんかもそうですが、開業医のクリニックには、MRさんも何社も来てくれるわけじゃないからMRさん経由の情報提供も自ずと少なくなる・・・。ましてや、医療器具、処置などに関する情報は、さらに難しくなるかもしれません。

医療内容って時代によってけっこう変わるんですよね。脳外科でも、今ではオペ後2日目からシャンプーOKなんて場合もあります。ドレーンが入っていない限りは洗える範囲で洗っちゃってくださいって。それが、ワタシが研修医のころは、開頭した部位を消毒してガーゼを貼る作業を毎日やっていたんですね。15年前はそれが当たり前だったんです。それが、「アメリカではお腹なら透明なシートを48時間貼って、その後開放して抜糸へ」とか「消毒は創傷治癒の遅延が起こり、かえってよくないらしい」とかまことしやかに言われ始め、今ではそれが当たり前になってきています。

ちなみに手洗いも変わりましたね〜!昔はブラッシングしまくってましたが、皮膚に傷がついて感染症の危険性が増すからかえってよくないと言われ出し、今は最後に爪の中など細かいところだけブラッシングに変わってきています。ワタシもあれには本当に苦しみましたね、腕が傷だらけで、オペが続くと傷の上からブラシでゴシゴシ・・・。医療ドラマなんか今だにゴシゴシやってますが、あれはアップデートしたほうがいいですね…。

ワタシが急性期医療を提供する釧路の病院の当直を続けることにこだわっている理由は、自分の知識が遅れて間違った方向にいないか、確認する意味もあると思います。一人で医療を行っているとどうしても不安になるんですよね。

 

<相談員2>
大量に薬を処方したがる医師、すぐに抗生物質を出したがる医師、そんなに儲かりたいかと辟易します。(内科)

<Dr.まあや>
あー、あー、いますいます抗生物質に関しては、ワタシが医学部にいたころから、風邪に対して抗生物質を処方するのはナンセンスだって言われていたんですよね。だから我々世代はあまり処方していないんじゃないかと思います。私が研修医時代は、頭部外傷後の縫合でも、何でもかんでも抗生剤を出してましたから、まだ何にも感染していないのに。ワタシは頭部挫創などではほとんど出すことはないですね。ところが困ったことに、患者さんが抗生剤希望することが多いんですよね・・・。いやいや、あなた何にも感染してませんよ・・・ってお断りしますが。小児科で子どもにたくさん飲ませているみたいですが、何でだろうなと思いますね。多剤についても、正直、ビジネス観点もあるのかもしれませんね・・・。どんどん検査したり。

時代に合っていない医療、古い知識にしばられているのは、我々の親よりちょっと上の世代だと思います。“お医者さま”として崇められていた世代ですね。ワタシの周りの同世代の医者たちも、お父さんと衝突した経験がある人が何人もいます。開業されていて、しかもそれなりに大きな病院になってくると、院長先生としてやってきたプライド、患者さんは自分に診られたいんだという自負があります。子どもたちが学んできた最新医療をすんなり受け入れられないために、喧嘩になるようです。もちろん、日進月歩で変わっていく医療にきちんと対応し、世代交代を受け入れて、次世代に託しつつ、見守っている先生は、本当に立派な姿ですよね。

<相談員3>
畳一畳ほどのエコー機械など、アンティークな医療機器に度肝を抜きました。(産婦人科)

<Dr.まあや>
あー、あー、ありますあります。開業医や個人病院だと、やむ得ないですよね。医療機器って高いですからね。MRI1台でも数億円、昨今では銀行もなかなか貸してくれませんから。東京で開業しようものならテナント料も高い。取捨選択しながら最低限の条件でやるしかないと思います。それでも日本は世界ナンバーワンの普及率。MRIやCTがこんなに簡単に撮れるのは日本だけなんです。医療を受ける方も、医療行為を行う方も、いかに恵まれているかという話です。

とはいえ、古い医療機器では、画像も鮮明ではないなど弊害もありますから、判別がつかない・・・といった事態になったら、迷わず良い医療機器を備えている病院へ送ることですね。不明な点は明らかにして自分でなんでも抱え込みすぎず、専門医へ紹介するというのも、良い医師の条件なんだと思います(ワタシは「もっと自分で診る範囲を広げたらいいのに」と、同期に言われることもありますが・・・)

結論:「老害と言われないようにがんばりましょう…。」

これは老害だ!っていう話がSNSで拡散されたり、上司にイライラしたりすることはありますよね。ワタシも医局の上司に嫌味を言われたり罵倒されたりして生きてきましたが、老害と思ったことは一度もありません。仕事が今ひとつの先輩医師に文句言われるのって絶対腹が立ちます。
でも、なんかちょっとおかしいかも、と思うことがあったとしても、やっていることは圧倒的に凄いと老害だなんて思わないもんです。外科は主従関係の上に成り立っているのでわかりやすいのかもしれませんね。

何が言いたいかというと、老害だ!と憤っていても、すぐに自分がその立場になるのだということです。ワタシなんて40を過ぎて当直室でミシンをカタカタ…老害に足突っ込んでますよね…。謙虚に誠実に生きていないと足元をすくわれます。患者さんと向き合って、勉強もちゃんとして、老害にだけはならないようにお互いがんばりましょう。

Dr.まあやの初のエッセイ本!

『カラフルデブを生きる
ーネガティブ思考を強みに変える女医の法則40』

(セブン&アイ出版)

コンプレックスがあるからこそ人は成長できる。
挫折や劣等感が、たくましく生きていくバネになる。

脳外科医×デザイナーとして、人生をカラフルに生きるドクターまあやのエネルギーの源に勇気をもらえる一冊。

 Dr.まあや(折居麻綾先生)

1975年東京生まれ、岩手育ち。岩手医科大学卒業後、慶應義塾大学病院で研修を終え脳神経外科に入局。2010年にかねてから夢だったファッションデザイナーの道に挑戦しようと日本外国語専門学校海外芸術大学留学科に入学する。翌年にはロンドンのセントラル セント マーチン カレッジ オブ アート アンド デザインに約2年間留学しファッションデザインの基礎を学ぶ。帰国後は事務所『Dr.まあやデザイン研究所』を設立しアーティスト活動をスタート。現在は釧路孝仁会記念病院、東京・小平市のあかしあ脳神経外科の院長として非常勤勤務している。 

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■イラスト/Dr.まあや 構成/ふるたゆうこ