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2018年09月02日

84.2%の医師が反対!「医師の残業規制は緩く」の方針へのドクターたちの意見

「この時期にこの方針!?」思わず目を疑い、二度見三度見したのが日経新聞に掲載された「残業規制、医師は緩く 救急・産科は上限見送りも」との厚生労働省方針。「働き方改革」の大きな焦点である罰則付き残業規制は、医師には5年の猶予が与えられ、2024年度から始まる予定ですが、猶予があるわりには随分と緩い方針となりそうな模様です。

折しも、東京医大の女子受験生差別入試問題を受け、過酷な医師の働き方を見直そうという機運が高まっている時期。そこに水を差すような方針に、驚きを通り越して唖然としている医師も多いのではないでしょうか。事実、編集部には「今が世論としても、長時間労働をなくすチャンスであるのに、それに逆行する判断に呆れました。現場でどんなに頑張っても、そこまであからさまに長時間労働を肯定されてしまったら、救急、産科で今まで踏ん張っていた人も持たなくなるし、今後志望者も減ってしまう(産婦人科、神奈川)」との声も寄せられています。そこで、joy.netパートナー登録医師を中心に今回の方針に対する意見を緊急調査してみました。

Q. 2024年度に導入される医師の残業規制についての厚労省方針(一般労働者より規制緩く、産科・救急は上限見送りも)についての意見をお聞かせください。

 

実に68.4%もの医師が「反対」との強い意思表明。「どちらかといえば反対」の15.8%を加えると、84.2%もの医師がNOの意を突きつけています。果たして、その理由とは・・・!?

医療の質を保つためには、残業規制緩和よりも医師自身の健康確保!

的確で迅速な判断を求められ、時に難しい決断も下さなければならない。家族や患者に責められることも少なくない。医師自身の心身の健康がなければ、医療の質を保つことは難しい。心身の健康を維持するためには、医師こそ日常的に十分な休養が不可欠です。(麻酔科、東京)

 

医師の責任感や立場として、制限を設けてもサービス残業してしまうものだと思うので、システムそのものがその良心に甘えてしまうと、職業人を守れなくなってしまうので、規制の意味がない。患者も救わなければならないが、医療従事者も人間なので、その健康をないがしろにするようでは医療は崩壊する。(外科、都道府県非開示)

 

疲労が溜まった状態では判断力が鈍ることを実感している。酷使されやすい救急、産婦人科などこそ法で労働時間を規制すべき。(総合診療科、東京)

 

患者は死なれちゃ困るけど、医師は死んでもいいのかと思う。昨今、あれだけブラック企業だの過労死だのという言葉が世間を賑わせているのに、医療業界は時代遅れもいいところ。パワハラやセクハラしかり、世間と何十年もかけ離れているように思う。(整形外科、東京)

「医療の質が保てなくなるため、残業規制は緩く」との方針に、医師が疲弊しているほうが医療の質が保てないとのツッコミが続出しています。特に、残業時間の上限設定を見送る可能性もあるという産婦人科、救急科については、希望者が減ることを懸念する声も多く上がっており・・・

救急や産科のように、瞬間的な判断力を求められる科に十分な休養をとっていない状態で従事するのは危険だと思われるし、自分や家族が患者になったらと考えると、やはりそういう科こそしっかり労働時間の管理をしてほしいと思う。また、産科などに進む人がさらに減ってしまうと思う。(精神科、愛知)

 

何の意味もない。結局、産科や救急の医者は24時間365日働いても違法ではないということか。規制をどうするかより、まずは残業代や手当をきちんと出すことが先決。(産婦人科、東京)

 

激務と多忙とリスクを解ってて産婦人科目指す希少な学生や初期研修医が、これじゃあさらに途中で潰れる。だいたい目指す人の過半数がすでに女性なんだから、超過や時間外できない状態に陥ることもあるんだし、こんな、時間外労働ありきの論議なんかすべきじゃ無いと思う。
個人的には自分は、自分で言うのも何だけど、かなり熱意とやる気ある医者だったから、かなり頑張ってたし研修も一流どころ渡り歩いてキャリアアップしたし、各所で時間外勤務して患者命、で頑張ってきたけど、それを患者が感謝する風潮ももはや無いし(当然至極と捉える)、せめて正当な対価が支払われるならそれでも辛うじてテンション保たれてやっていけるけど、それも無いならさ。
私が鬱になったくらいだから、普通はやめるよね? と思います(産婦人科)


過酷な産科医療の最前線で奮闘しながらも、鬱に陥った医師本人からの言葉、重みを感じます。現実問題として「断固反対と思うが、現実問題として、うちの科(産科)では人員的に上限を守るのは困難かもしれないも思う。(産婦人科、兵庫)」との声も。でも、だから仕方がない・・・というのでなく、上記に指摘されているような「そもそも労働時間の管理を」「せめて正当な対価を」といった対策が先にあるべきなのかもしれません。さらには、人員不足対策への指摘も相次いでおり・・・

残業時間上限を緩めるより、人員不足・偏在解消を

忙しい科は働けではなくて、忙しい科にはしっかりお金をかけて、人材を多くし残業をしなくて済むように配慮すべき。だから、女医が働けないといわれるんです。しっかり時間で区切って働けるならば能力は変わらない。(内科、神奈川)

 

一般労働者も医師も同じ、ヒトという動物である。医師というヒトは一般人と違い、疲れ知らずでかつハイクオリティの医業を提供出来る生き物、と仮定するのはおかしい
医師不足の弊害を埋めるために長時間労働を求めるのは順番が逆、まずは必要人員を確保する方針を打ち出すのが先な筈。人員不足を長時間労働で埋めるのでは、今までと何も変わらない。(放射線科、東京)

「医師は余っていく」との試算が出ていたはずなのに、「医療が崩壊するため、医師の残業規制は緩く」って、やっぱり十分な医療を提供するには医師は不足しているということですよね・・・。
そもそも残業時間の上限を設けたところで、実態が伴わないだろうとの理由での反対も多いようで・・・

結局どんな規制をかけてもそれは「申請する時間外の量」を規制しているに過ぎない。私が勤めている大学病院も月何時間まで年間何時間までと決まっている。また、仕事としてでなければいけない会議なども時間外としては認められていない。論文を5年間で最低1本をかかないと首になるがそれでも論文執筆やデータ収集の時間も時間外にならない。意味がない制度である(耳鼻咽喉科、都道府県非開示)

 

例え厚労省が残業規制を厳しく設定したとしても、実際の医療現場では守られないと思う。現に、残業時間については自己申告制の病院が多く、タイムカードの導入は進んでいない。自己申告制の病院では部長クラスが実際の残業時間よりも少なめに書くように指示しているので、厚労省が規制しても何も変わらないと思う。むしろ、厚労省主体ではなく、医療界が自ら主体となり、医師の働き方改革を行なっていかねば現場は何も変わらないと思う。(内科、東京)

 

ただでさえ、人道的観念から患者を残して帰るような医師は少なく、残業規定を例外にするのではなく、残業してまでも患者に尽くす医師のためにプラスの考え方をしてほしい(整形外科、東京)

そもそも医師の労働時間管理がされていない職場、タイムカードもない職場が多いという現状。きちんと時間外労働時間を把握できるのか、サービス残業が増えるだけなのでは・・・との懐疑的な声も多いようです。

現場医師と医師会・病院団体との乖離を指摘する声も

それにしても、これだけ多くの反対の声が上がっている現状。そこから考えても、現場の医師とシステムを作る側・経営側の意識の乖離の大きさは甚大であることがうかがえます。実際、そこを突く声も寄せられており・・・

内容的には反対だが、厚労省側ではなく医師会側に責任があると思う。(消化器外科、東京)

 

医師個人の生活といった自己犠牲を求めるものでは一時的に難局を凌ぐことができても持続性に乏しく、またすぐ医師不足に困るようになり成り立たなくなるだけと考えます。特に団塊の世代の医師が退職する時期を目前にしており、そこを見据えた対策が必要と考えます。

医師会や病院団体の代表は、管理職サイドの方ばかりで現在の仕組みをいかに維持するかに腐心しているように見えて残念です。かといってそこで若手を引っ張り出すのではなく、現在勤務医を中心にいろいろな勤務形態で現場を支える中堅医師たちの意見をもっと広く集めるべきと思います。(家庭医療科、岡山)

 

現在、日本を指揮する人たちや病院の経営者らは、高度経済成長を支えてきた世代であり、自己犠牲して働くことを美徳としてきた世代である。国レベルでこの文化を変えない限りは、個々の病院の判断に任せていては変えていけないと考えるが、当の国がこのスタンスでは、何も変わらない。高度経済成長の時と異なり、がむしゃらに頑張れば日本の経済が飛躍的に上昇し給与が伸びた時代とは違う。欧米がすべて良いわけではないが、日本同様に少子化が進んでいる欧米の働き方を、日本も少しは見習うべきである。(緩和ケア、大阪)
※関連記事 女医の就業率、世界トップクラスのスウェーデン。 社会制度、教育、日本とどこが違う?

上記医師の指摘の通り、現場の最前線の医師たちの意見を代表するような立場の方が検討メンバーに入るだけでもこの乖離は小さくなっていくのではないでしょうか。

私は循環器内科医として救急の現場で生きてきたため、長時間勤務は構わない立場です。医師は社会に奉仕して当たり前で、24時間医者でなければならないと思います。それが嫌なら辞めればいいだけ。何のために医学部行ったの?(循環器内科、福岡)

このような心がけは本当に崇高であるし、尊敬しますし、患者やその家族であれば心強く感じることでしょう。とはいえ、全ての医師にそれを求めるのは難しいように感じられてなりません。

警鐘にはなる、前進とはとらえる、でもしわ寄せは院生・無給医に!? 「諸手を挙げて賛成」とはいえない賛成派の意見

残業規制ができること自体は賛成だし、前進だと思う。産科、救急科について上限見送りになることは容認はできないが、今後改善されることを期待したい。産科、救急科を目指す医師が減らないよう、将来的な改善を約束してほしい。個人開業医でのお産をやめてセンター化し集約する、患者は不要の時間外診療をやめ、不要の時間外診療で病院が儲かるシステムをやめるなど、厚生労働省主導で医療システムを改善して欲しい。(小児科、福岡)

 

ようやくサラリーマン医師にも労働基準が導入されてきた結果だと思います。現状として、圧倒的にマンパワーが足りないからそうせざるを得ないんではないでしょうか。その分ちゃんと残業代と福利厚生が大企業並みにしっかりしてもらえるといいですね。無給もまだありますし。医師の数に対して病院数が多いのも一因と思います。(腎臓内科、東京)

賛成派の医師は、オールオッケーではないものの前進ではあると一定の評価をしている様子。とはいえ、コンビニ受診抑制への取り組み期待や無給医へしわ寄せがいくことへの警戒も寄せられているようですね。無給医だけでなく、労働者でないものの診療行為もある大学院生へのしわ寄せを心配する声も挙がっています↓。

これはどこの医局でもそうなのかどうかはよくわからないが、人が足りなくなり労働時間が制限されれば、おそらく労働者としてカウントされない大学院生にそのしわ寄せの多くがいくだろう。(消化器外科、福岡)

産科の上限規制見送りの可能性については、苦渋の決断で賛成の意を唱える医師からの声が届いています。

一般労働者よりミスが責められる医師だけが過労状態を許されるのはどう考えてもおかしいと思うが、働き方改革の風潮のせいで時間外手当に上限が設定されてしまったりする現状もあり、対策なしに時間だけ規制しても実際の労働が減るわけではないので無賃金労働時間が増えるだけかも。月の3分の1当直してる産婦人科医が当直明けみんな帰ったら人数減りすぎて日中業務がまわらなくて自分たちの首が絞まるので産科の上限見送りは妥当ですよね。そのかわり国が何かしてくれるというなら、医師は税金免除とかにしてほしい!笑(産婦人科、東京)

上限見送りの代わりにどのような支援ができるのか。上記医師の指摘する税金免除は現実的でないにしても、せめて拘束時間に見合った対価は最低限実現してほしいところ。実際、別の産婦人科医からも「残業代がもらえなかった時代を知る者としては、複雑だが、そうしないと施設の医師の確保が難しいなら、対応するべきだと思う。多くの医師の献身、対価に見合わない残業代でも働いているからこそ、今の医療は成り立っている。(産婦人科、東京)」との指摘も寄せられています。

また、残業規制が厳しくされることの管理的な弊害を指摘のうえ、今回の方針にある程度の理解を示す医師も。

杓子定規な労基署に好きにさせられない。微妙にグレーな部分も作っておかないと、厚労省だけでなく労基署にもガチで管理されるようになったら余計な管理仕事が増える。医者として自由に働ける部分は必要。ただしその分社会的な配慮(医師は一般の労働者と同等に扱ってはならない、これは特別扱いとは別)が必要であると考えている。

 

一方、残業規制がないからといってタスクシフティングが進まないのは問題であるし、過剰な労働時間からくる医師のバーンアウトは地域の医療崩壊にもつながるので、旧来の方法を続けるのは問題があると思っている。むしろ夜間救急の応酬義務を撤廃し医療費に病院Fee、医者Feeを上乗せしてしまったらどうかとも思う。労働基準法だけの問題ではないと考えている。(リハビリテーション科、静岡)

折しも、明日9月3日には「第9回医師の働き方改革に関する検討会」が開催予定。議題は

・応召義務、さらなるタスク・シフティングについて(ヒアリング)
・医師の勤務実態について(宿日直、自己研鑽を中心に)
・諸外国の状況について

だとか。どうか理想論や医師の責任感に過剰に依存した結論でなく、現実的で前向きな妥協による建設的な議論となることを祈っています。
joy.netは、今後も「医師の働き方改革」を特集していきたいと思っています。ご意見等はぜひこちらよりお寄せ下さい。

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医師は長時間労働で当たり前なのか? 医師120名による「医師の働き方改革」への5つの提案

医師の残業規制に関する方針についてのアンケート
集計期間:2018年8月27日(月)~2018年9月1日(土)
有効回答数:57名(女性49名、男性8名) 

文/joy.net編集部

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