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2018年09月15日

週刊現代「女性医師の手術はいやだ」を女医たちはどう受け止めたか

「女性医師の手術はいやだ」――目を疑うような特集記事が掲載されたのが「週刊現代 2018年9月22、29日号」。女性は生理があるから体調に波があって信用できないだの、反射速度が遅いから1分1秒を争う手術に向かないだの漫画家やら元代議士の医師が見事なノーエビデンスでコメントし、挙句の果てには「命より男女平等が大事か?」と問いかける始末。炎上商法だから過剰反応せざるべし・・・・・・と分かっていながらも、やっぱり黙っちゃいられない。そこで、当事者たる女性医師たちの意見・感想を聞いてみました。

オペは体力第一ではない。患者さんに無用な不安を煽るな。外科系女医たちからの声

自分自身、手術技術を証明する専門医を取得し一線で手術に携わる外科医として、このような現場を知らない表面的な記事は論ずるに値しないと感じます。しかしながら未来の外科を担う女性医師のためにも意義を唱えることは大切だと思います。

 

体力的に劣るような人はわざわざ外科を専攻しないし、生理云々が仕事に影響するなら、どの職種も女性を信頼できないということになります。

 

今回の記事はおそらく「女性医師」というネタになりそうなトピックを取り上げセンセーショナルな話題で売り上げを伸ばすことが目的なため、医療の問題の本質を探る姿勢もないのだと感じます(読んでいませんが)。明らかな偏見であることは明白で、取り上げる価値もないと思いますが、この記事の一番の問題は、すでに診療を受けている患者さんやこれから手術を受ける患者さんたちに無用な不安を煽ることになる点です。

 

私達は患者を守ることが仕事であり、無知な批判に煽られるほど暇でもありません。外科医の日々の仕事は一般には想像できないほどタフですが、その中で十分に勉強しトレーニングした上でプライドを持って病と闘っている自負がありますから、わざわざ女性医師の立場から抗議はしません。ただただ、弱者である患者さんの立場に立って抗議する思いです。(消化器外科、東京)

患者さんへに無用な不安を煽るような不利益への抗議。性差を持ち出して、偏見に満ちた勝手な論調を繰り広げる週刊現代記事との圧倒的な視座の違い、第一線で活躍し続けてきた女性外科医ならではの矜持に、ただただ怒りと悔しさを爆発させていた編集部も居住まいを正す思いがしました。
外科系の女性医師からは、性差や体力だけを問題にすることへの疑問、また女性のハンデと思われる点を跳ね返してきたエピソードも多数寄せられています。

ナンセンスだと思います。外科医を志す医者は性別を問わず修練をつんでおり、サブスペシャリティーを習得していくものです。そもそも手術のことを真摯に考えられない人は男女とわずオペをするべきではありません。オペの体力は肉体労働で要する体力とは違い、むしろ忍耐力なので性別によって左右されるものではありません。(産婦人科、埼玉)

 

記事そのものは読んではいませんが、偏見以外のなにものでもないと思います。 私自身、外科医であり17年やってきましたが、たしかに男性医師に体力的にはかなわない部分があるかもしれませんが、一度だって体調不良などで執刀できなかったことはありません。生理の時でも男性医師と同じように連続8時間手術もこなしてきています。器械を使い部分では(自動吻合機など)手が小さいとか握力がないとかの理由で苦労はしましたが、自分なりの克服方法も見つけ、女性だから劣っているとは全く思いません

 

逆に女性ならではの繊細さで傷が綺麗とか言うこともあるでしょうし、私自身は明らかに合併症が少ないです。どこかで噂を聞いてくださった方から手術を担当してほしいと言われることもしばしばで、病院職員のご家族など関係者を特に担当させていただくことも多いです。
したがって、どなたがおっしゃっているのかわかりませんが、偏った意見であると思いますし、女性医師に失礼です。(外科、兵庫)

 

生理痛の症状は個人差が大きいので,理由に挙げるのはどうかと思います。私は重い方ですが,ロキソニンを時間を調整して内服してました。実際手術の時は痛みも忘れていることが多いので,閉創時に痛くなることが殆どです。
また女性看護師であればよくて,女性医師は嫌だというのは理屈が通らない気がします。
男性医師は二日酔いや体調管理がずさんな人もいて,性差というより個人差かなと思います。
女性医師の方が術後の予後が良いという研究結果もあるようですので,女性医師を否定する要素にはならないと思いますが,受けたくない人は受けなくて良いというのが本音です。何かある度に女性医師というだけで非難されるのは,こちらとしても精神的に削がれるだけなので。(消化器外科、長崎)

性差でなく個人差。わざわざ言うまでもないことを、あえて言わなければならない記事が出されたことを本当に残念に思います。個人差ではありますが、思わず疑いたくなる男性医師のオペエピソードも寄せられており・・・

そう思う方もいるのだろうな、という諦めの気持ちが強いです。わたしが研修医に手術の助手を頼むときは、女性医師よりむしろ、屈強な男性研修医が手伝ってくれるときのほうが慎重になりますね。あかちゃんの手術はとても繊細な作業ですから、ちょっとした力のかけ方で大事な血管や神経が損傷してしまう可能性もありますから。もちろん、繊細な手術をなさる大柄な男性医師もたくさんいます。ようするに、関係ないのです。このような記事が掲載されること自体、なんだか恥ずかしいですね。(小児外科、東京)

 

男性でも気分や体調にムラがある医師もいる。女性ならではの細やかさ、丁寧さなど男性に劣らない点はたくさんあると思う。真剣に診療をしている医師に対して失礼すぎて言葉が出ない。看護師は女性というのも偏見だと思う。精神科の病棟など男性看護師は重宝される場面はたくさんある。いずれにしても日本人は偏見深い民族だな、とつくづく恥ずかしくなる。(外科、静岡)

 

完全な偏見です。男性医師の手術において、患者さんかわいそうだなと思うことは正直あります。生理で体調に変化があるとは言いますが、男性は私生活において波がある方が多いです。女性も生理で本当につらい人はサイクルで周期がわかっていますので、手術日程を合わせません。(消化器外科、東京)

 

男のヒステリーの方がたちが悪いことを知らないなんて、幸せな著者だと思う。そもそも週刊誌なんて、やたら薬を悪にしてみたり、きのこで癌が治るとか書くレベルなので、個人的には気にしても仕方ないと思っている。彼らにとって芸能人の不倫と同レベルの話題にするということは、女性医師の存在感が出てきている…ということで。ただ、女医ネタだけでなく医療情報の全てに関して、なんでも真に受ける患者を減らすための患者教育は必要だと思う。(整形外科、愛知)

どのコメントも感情的にならず、いたって冷静。女性外科医の器、何事にも動じないタフなメンタル、ロジカルさを感じます。

女性医師が劣るという根拠は?
エビデンスをもとにした反論も多数

エビデンスが示されておらず全く信用に値しないので相手にしたくないが、一般人である患者の中には不安を煽られる人もいると思う。この記事に対しツイッターでスウェーデンならこのような性差別的記事を出すような出版社は非常にバッシングされるという意見があり、日本はそのような声が上がらないことが残念である。(麻酔科、東京)

 

女性医師の手術はいやだという個人的な意見は、抵抗はありますが、言論の自由として雑誌に載せることもいたしかたない。ただ、そこに「命にかかかわる」という副題をつけるほどの根拠はあるのでしょうか。根拠がなければ、これほど、我々の努力を踏みにじる差別はあるでしょうか。営業妨害と思います。(産婦人科、神奈川)

 

世界的にも、女性医師の方が対応が細やかで重症患者を回復させる率が高い、という論文が出ています。1人で手術しているわけではありません。そもそも1人でできる手術はありません。ダヴィンチが普及すれば1人でも可能になっていくかもしれませんが。
仮に体調に波があったとしても、助手がすぐに執刀を変わりますしそれは男性の医者でも同じことです。そもそも1人でオペの方針を決めるわけではないので、「女医が、」などという議論すらナンセンスと思います。(麻酔科、東京)

 

失笑です。女性医師が担当した患者の方が予後が良いとする報告まであるのに。適性はひとそれぞれ、男性でも外科が合わない方もいます。女性で繊細なオペが得意な方もいます、またその逆も然り。女性の生きにくい外科の中で仕事されている女医さんは、頑張り屋で優秀なひとなんだなと私は思います。生理と体力だけで女性医師が劣ると語るのはよほど頭の弱い方が書いた記事なのだと思いますね。(小児科、東京)

2017年における世界で元も反響の大きかった学術論文ランキング第3位にランクインされた、カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教の津川友介医師による『Comparison of Hospital Mortality and Readmission Rates for Medicare Patients Treated by Male vs Female Physicians』などを挙げ、反論される女性医師は他にも多数でした。
ちなみに、「週刊現代」の記事にエビデンスをもとにした鮮やかな反論が掲載された桑満おさむ先生ブログも必見です。

呆れる、憐れむ女性医師も多数
女医たちは動じない!

読者のレベルがわかる。と思っただけです。「女は男より劣る種族だ」と思いたい人が読んでいるんだろうな、と。出来る人は、性別のことは言わない。(産業保健、岡山)

 

さすがにそこまでの内容を真に受ける人は、リテラシーが低すぎるので、どちらかというと週刊現代が顧客を失ったのではないでしょうか。
女性が体力で劣ることがある、生理で体調に波があることがあるのは事実ですが、すべての人間はすべて違うので、男性女性で分類をしようとする部分に基礎知力の欠如を感じました。(整形外科、埼玉)

 

いかにも時代錯誤の高齢男性をターゲットにした記事なので、相手にしている方が無駄。くだらない記事を相手にする前に他にするべきことがある。そちらには選択の余地があるでしょうから、女性医師が嫌なら他の病院に行ってください。(産婦人科、都道府県非開示)

 

言葉は悪いが、アホが何か言ってるとしか。昔は悔しく思ったりしたけれど、今はそういう爺さん達の寿命が尽きるまでの辛抱ですわね・・・という心境。(麻酔科、東京)

 

おそらく、表に出ないだけで、そういう考えを持った人は少なからずいるのだろうなとは思います。ただ、このご時世では、「よくぞ言った」と声をあげる人は少数で、「私は偏見に満ちた考えを持っていますと宣言しているようで恥ずかしくないのかな、かわいそう」と思う人が多いのではないかと思います。なので、怒りすら覚えません。
実際、病気をしてみると、看護師も体格のいい男性の方が安心できることもあるし、入浴介助も男性患者なら同じ男性の方が良いという人もいます。もちろん女性は同じ女性医師の方がいい人が多く、女性医師を売りにしている病院も多くあるのになと思います。(緩和ケア、大阪)

冷静に繰り出される皮肉、そして憐れみ・・・痛快です。「恥ずかしくないのかな、かわいそう」「基礎知力の欠如を感じました」などなど、極めて冷静で、決して相手の土俵におりて罵らない姿、なんだか胸のすく思いです。

女性医師のほうが手術が劣るというエビデンスはない。偏見に満ちた記事には、心からの憐れみを。ただし、患者さんが誤った情報に振り回されることには断固とした抗議を。女性医師たちからの冷静な意見・感想を目の当たりにし、改めて女性医師の高いプロフェッショナリズムと矜持に尊敬の念を抱いた編集部です。

ちなみに、女性医師たちに「女医は嫌だ」と拒否された経験があるかを聞いたところ・・・

63.3%はなかったとの回答。女性医師だから・・・という単純な偏見は実際には減りつつあるのかもしれません。きっとそれは、女性医師がその姿と実績で勝ち取ってきたもの。とはいえ、「ある」と回答くださった36.7%の先生たちからは、血が出るまで拳を握り締めたくなるほど悔しさを感じるエピソードが多数寄せられています。まだまだ残る偏見に異を唱えるべく、次回ご紹介してまいりたいと思っています。

よろしければ、引き続き「アンケート」にもご協力ください。

週刊現代「女性医師の手術はいやだ」についてのアンケート
集計期間:2018年9月11日(火)~2018年9月14日(金)
有効回答数:49名

文/joy.net編集部

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