A72cde2a 20e0 49df 8d0c f99401944ac7連載・コラム
2018年09月26日

どうする?新入社員のメンタル不調/世直し産業医・Dr.さくらの「さすらい日記」 第11回

She is back! 約半年の時を経て・・・さすらいの産業医「Dr.さくら」がターミネーターのごとくjoy.netに戻ってきてくれました。どうやら半年の不在の間にも“世直し産業医”として「雨ニモマケズ」さながらの活躍を見せていた模様のDr.さくら。「東ニ過重労働アレバ 行ッテ是正シ 西ニメンタル不調ノ社員アレバ 行ッテ復職プランヲネル」という宮沢賢治もビックリな東奔西走の一方で、なんと世直しJr.のご誕生もあったとかなかったとか。それでは、半年ぶりのDr.さくらの世直し説法、始めます!!

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前回のコラム掲載が3月初旬。私が産業医を務める企業の皆さまも間もなく入ってくる「新入社員」を今か、今かと待ちわびている時期でした。その後、期待に胸が高まる桜の時期を越え、エネルギー溢れる新緑の季節を駆け抜け、じめじめした梅雨の時期を乗り越え、暑い夏も終わり秋の訪れを感じる今日この頃では、不調やスランプに陥る「新人」たちを心配し、産業医Dr.さくらを今か、今かと待ちわびるSOSが各企業から届き始めております

就職活動の末に勝ち取った採用の美酒に酔う入社当初、産業医を頼る新入社員は稀です(最近は売り手市場のため、勝ち取った感はないでしょうか?)。しかしながら、テンションMAX状態の研修期間を終え、現場に配属され、壁にぶち当たったり慣れない仕事に四苦八苦しているうちに新入社員たちも少しずつ、少しずつ神経をすり減らしていくのです。そんな彼らの様子を目の当たりにし、焦る人事や上司、経営者たち。「あのころはあんなに希望に満ち溢れていたのに!!」とまるで長年連れ添った恋人の心変わりを嘆くかのように産業医であるわたくしに訴えるのです。

『近頃、メンタルヘルス不調に至る若者が多い気がするのですが、、、そもそもメンタルヘルス不調にならない人を社員として採用する方法はありますか?』

と。最初にこの質問を受けた時、『それが分かれば苦労せんよ(泣)!』という思いと、『う~ん、なるほど!さすが経営者!!!』と感心する気持ちと両方でしたよ。ただ、このような質問は一社だけでなく、その後も幾度か、いろいろな企業さまから頂きました。

確かに、メンタルヘルス不調をきたせば、仕事のパフォーマンスは低下する、直属上司、人事労務担当者、果ては産業医まで関わることになり、その労力、時間、人件費も安くはないでしょう。さらに、ひとたび、メンタルヘルス不調による休職社員が発生すれば、通常、年単位での対応が必要となり、経営者としては、経費がかさむし、対応一つ間違えると、裁判沙汰に巻き込まれ、大きく企業イメージやブランド力が低下する可能性もある、厄介ごとのように考えるのも無理からぬことです。

残念ながら、採用後にメンタルヘルス不調を来すか否かを正確に予想するツールは今のところは存在しません。メンタルヘルス不調を来す要因は職場環境、業務内容とその量、人間関係、個人の資質・・・と複合的であり、なかなか、数値化の上、予測することは難しいと考えます。

転落、交通事故などのような通常の労働災害が起きれば、もしくは起こらないように、企業は積極的にリスクアセスメントを行い、再発予防に取り組む傾向にあるのと対照的に、企業は精神障害がらみの労災は積極的に認めたがりません。これは、メンタルヘルス不調が個人の資質やプライベートでの要因も絡むからでしょう。

やや脱線しましたが、元に戻ります。さあ、思い出してください、皆さん!!!研修医だったころの研修病院や指導医への期待感を!研修開始直後は高い希望や期待を抱いて、研修開始しましたが、その数か月後、その期待を打ち砕かれた先生が多いのではないでしょうか?

産業医という仕事をするようになり、感じるのですが、これは研修病院(雇入れる企業)と研修医(新入社員)との間に期待のミスマッチが起こるのです。これは参考文献で提唱されておりますが、就活の段階で、充分な情報が与えられず、学生・求職者は企業(研修病院)に対する勝手なイメージと、これまでに接した一部の企業の人たち(研修病院の指導医)とのやり取りだけを手掛かりにその企業での勝手な期待を形成していく。それが、入社後(研修開始後)、このような期待のミスマッチが『リアリティ・ショック』という形で顕在化していくわけで、それが発端となって、メンタルをやられてしまう若者も残念ながらいます。
リアリティ・ショックを起こした新入社員はメンタルヘルス不調にならずとも、少なからず仕事へのモチベーション低下を来たりすることもあります。

参考文献 
横浜国立大学准教授 服部泰宏
『こうすれば、必ずいい人材がとれる!採用学』

 

 

 

 

常々、感じるのが、この期待のミスマッチがなるべく発生しないか、発生してもミスマッチが小さくなるように、企業側も(ネガティブな情報も含め)ホントの情報をある程度、始めから若者に与えつつ入社後に仮にリアリティ・ショックを起こしたとしても、フォローアップするような上司・同僚との関わりや研修システムなどを用意できるといいなぁということです。

当然、実際の現場では、様々な採用努力を重ねている企業も存在します。Dr.さくらが知っている事例では、採用面接を3次選考(3段階)まで行っている企業(1次選考;年齢の近い現場社員が行い、2次選考;管理職が行い、3次選考;役員が行う)があります。各選考で1時間近く面接時間をとり、じっくり話を聴き、多角的に求職者について、能力・人柄だけでなく、企業文化にマッチするかどうかまでを評価するのです。面接にヒト、労力、時間をかけるんですね。

また、事務職採用の面接時に、エクセルで作業をしてもらって、それをスライドで拡大して人事担当者、管理職、役員などが評価する企業などもあります。『エクセル、得意です』と言っていた求職者が実はあまりエクセルが使えなかったりとか技術・能力も評価できるそうです。

他にも、インターンシップ制度を設けて、実際に社員さんと働いてもらって、内定を出す企業もあります。面接時間10分程度ではなかなか、その人となりを評価するのは難しいと思います。個人的には、面接に時間をかけ、いろいろな方面からの質問をしてみる、そして可能であれば、実際の働きぶりをみてから採用したほうがいいかなと考えます。

いずれにせよ、新入社員の気持ちの落ち込みや自信喪失へ対応する際、自分が研修医だったころに救われた経験などを思い出すと、つい熱のこもったアドバイスを送ってしまうなあ・・・と、研修医時代から十ウン年たったDr.さくらは目を細めるのでした。

Dr.さくら

大学卒業後、内科系医局に入局後30歳で産業医デビュー。2企業からスタートし、病院の外来、専門領域の専門医・指導医資格取得の勉強などと並行しながら、産業医としての経験を積む。指導医資格取得後も大学と産業医の仕事を両立させ、現在は10数社と契約。2児の母。

世直し産業医「さすらい日記」back number 
第1回 産業医、はじめました。

第2回 名刺交換って、どうやるの?

第3回 ママたちこそ長時間労働者!?

第4回 熱中症の落とし穴!

第5回 どうする? 初めての産業医面談。

第6回 産業医の相棒、人事担当者のイロイロ

第7回 メンタル不調者にして、クラッシャー。リカ見参! 

第8回 決戦のとき――産業医と主治医の直接対決! 

第9回 ノロウイルスの危機!ヒヤリハットを生かすDr.さくら流意識改革 

女医にこそ向いている!
ママドクターが伝える産業医のススメ

産業医デビューで陥りがちなトラブルとは?
臨床とはまるで違う現場をレポート。