E1f85128 4649 400e aa45 721587cdbb06連載・コラム
2018年12月26日

医学部不正入試についてぼんやり考えること。/Dr.まあやの「今日も当直です」 第26回

2018年の医療業界は、後半にきて医学部不正入試問題で大騒ぎの1年になりました。官僚の子息の裏口入学が表沙汰になったことから始まったこの騒ぎ、当事者である女性医師に聞くと世間が考えていたほどは反対意見が多いわけはありませんでした。(参考:医学部不適切入試を医師たちはどう受け止めているのか)。女子受験生は不利、多浪生は不利について「女子で現役だからあまり強い意見は言えないんだけど・・・」と恐縮する実はとても繊細なご意見番、Dr.まあやに聞きました。

現場ニーズに合わせた人材調達はある意味で正当。隠すから問題になる。

ついに来てしまいました・・・、我が母校、岩手医大も不正入試発覚です。そもそもこの問題、某官僚の息子の東京医科大裏口事件から芋づる式に出てきたんですよね・・・。こんなに大きく発展していくとは・・・。今、まさに医学部入試の膿が排出されているときなんでしょう。

各大学の会見では、女子は結婚・出産のため離職することが多く、医師不足の状況にそぐわない寄付金目的でOBの子息を有利にしている、さらには男子より女子の方がコミュニケーション能力が高い(!?)というなんとも言い難い理由が公表されています。私立大医学部出身の現役女医として、色々考えてみるものの、「もう医者になっているから好き勝手言えるんだよ」と思われそう・・・。

まず、私立なんだから、今置かれている状況を明らかにした上で最初から条件を公表しとけばよかったのに、と思うのです。女子は何割、多浪は何割、それぞれの根拠を明確に書いておけばいい。外科に来る女医さんは少ないのは事実です。医師不足問題もある中で、男女差別かもしれないけれど、女子枠を少なくするしかないのかな、と(もちろん、その前に現場の働き方改革があって、女医でも働きやすい環境が整備されれば良いのですがね)。そうやって現場のニーズに合わせることは理にかなっているかな、と。問題なのはそれが受験生に伝わっていないことです。公表してしまうと、受験者数が減ってしまうのかもしれませんが。


多浪生がダメだということはないが、努力が足りない人はダメ!

多浪生不利に関しては、ワタシのまわりにも多浪して医学部に入学した友人がいるのでコメントしづらいのですが、医者って体力勝負なところはあるので、1歳でも若い方がいいのかなぁ、と思うことはあります。ワタシが脳外科レジデントのとき、(多浪ではなく)40歳過ぎた研修医がいました。若い研修医に混じって、降圧剤を内服しながら徹夜続きで働いているのをみて、しんどそうだな・・・と思った記憶があります

もちろん、多浪生だった人でも今現場で活躍している友人もいるし、多浪に至った経緯も色々あるので、一概に否定できません。違う学部を目指していたけれど途中で医学部を目指した方、どうしても希望の大学に行きたくて何年も努力した人もいます。この問題の犠牲者で多浪になっている方もいるかもしれません。しかし、ダラダラと多浪生を続け、医学部に入ってからも留年したり、国家試験合格に時間がかかったり、医者になってからも苦労する人も少なくはありませんね。

そして、出身OBのご子息が有利になる問題に関して。ワタシが大学生のときに、某国立大学出身の教授がこんな話をされました。「岩手医大は、医者のご子息が多い学校です。それを否定する人々も多いかもしれません。しかし悪いことだけではない。医者がどんな仕事なのか知った上で、覚悟を持って入学し、実家を継ぐわけですから」と。なるほどと納得したのを覚えています。

とはいえ、受験時に有利な状況を作ってもらうというのは、やはり平等ではありません。
いずれの問題にしても、不正入試問題の解決としては、その大学の合格条件の提示をはっきり示すか、もしくは無条件に成績順にする、ということが、誰もが納得できる判断ですよね。

自分の受験のときのことを改めて考えてみました。医学部合格者は、女子が少ないという認識はありましたが、なぜ女子が少ないのかという疑問はありませんでした。まだワタシの時代は地域枠という制度はなかったものの、地元出身で、祖父が医者だったから合格できたのかなぁ、実力ではなかったのかもしれないと、小さなプライドが崩されていくような気持ちにもなったこともありました。

確かに私立医学部ですし、国立や有名私立医大ではないですが、入学後に必死に勉強したし、国家試験も無事通り脳外科専門医もなんとか取得しています。今でも、医局の優秀な周囲の先生たちと比べて自分に足りないものは何か、患者さんに不利益にならないように常に勉強はします。過信せずに、自分でわからないことは、専門医の先生にお伺いをたてます。努力は、医者を続ける限り、一生続くものだと思っております。

不正入試は医局の闇の一部に過ぎない…!?

不正入試問題はほんの一部分に過ぎず、この医療業界には課題が山ほどあります。医師不足に、診療科による偏在、増え続ける医療費、そして過酷な医師の勤務環境・・・。そんな課題山積の中で、なんとか医療をまわすために現状の歪みがある。最初から悪意を持って差別しようとしているわけではないはずです。それらをすべて開示し問題解決に向けて多方面へ働きかける、その覚悟、気力、労力が必要で、それには政府にも現場医師にももちろん患者さんにとっても、想像を絶する負担もかかってきます。途方に暮れる話ですね・・・。
もちろん、どこかで解決していかなければいけないわけで、今回のことはその第一歩になっているのかもしれません。

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 Dr.まあや(折居麻綾先生)

1975年東京生まれ、岩手育ち。岩手医科大学卒業後、慶應義塾大学病院で研修を終え脳神経外科に入局。2010年にかねてから夢だったファッションデザイナーの道に挑戦しようと日本外国語専門学校海外芸術大学留学科に入学する。翌年にはロンドンのセントラル セント マーチン カレッジ オブ アート アンド デザインに約2年間留学しファッションデザインの基礎を学ぶ。帰国後は事務所『Dr.まあやデザイン研究所』を設立しアーティスト活動をスタート。現在は釧路孝仁会記念病院、東京・小平市のあかしあ脳神経外科の院長として非常勤勤務している。 

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■イラスト/Dr.まあや 構成/ふるたゆうこ