59e9c681 3e8e 4bd9 8398 3f4b9b06f85e医療トピックス
2019年01月06日

産業医と進める医師の働き方改革の心得――横浜市立大学附属市民総合医療センター 産業医&精神科医に聞く

医師の働き方改革は、一般社会以上に進みづらい。医療という特殊性、命を預かる責任、慢性的に不足状況にある人員、そして医師個人のマインドセットに応召義務と、ブレーキになる課題が山積しているからだ。杓子定規に進めるでもなく、グレー対応を行うでもなく、いかに実効性を持たせていくのか。横浜市立大学附属市民総合医療センター・中村京太先生(産業医/安全管理学准教授)、西井鉄平先生(産業医/呼吸器病センター講師兼務)、高橋雄一先生(健康管理室医/精神医療センター部長兼務)らに話しを聞いた。

Q1
長時間労働やストレスチェックで「高ストレス者」の判定になったなど、問題を抱えている医師に産業医面談を受けてもらうにはどうしたらいいでしょう?
同業でしかも同じ施設で働く医師には面談されたくないとの理由から、産業医面談を敬遠する医師が多いと聞いています。

 

A 同じ病院の勤務医としての目線を忘れないことが大事

当センターの医師は、面談を嫌がる人はいません。
同じ病院の勤務医としての目線を忘れないように心掛けているのがいいのかもしれません。一律に「長時間労働はダメ」と規制するのではなく、改善策を一緒に考えようというようなディスカッションをしています。

また面談にあたっては、システムの問題にフォーカスするようにしていますし、本人にもそれを伝えています。問題があるのはあくまでも組織のシステムであり、個人ではない。システムを改善することで問題解決をめざすというスタンスです。

なので、ディスカッションの内容で、上司や病院幹部に上申しにくいことは、個人名は出さずに、産業医から進言するなりサポートするということを明確に伝えて、建設的な議論ができるように気を配っています。個人を矢面に立たせることは絶対にしません

一方で、状況の改善が認められない場合には、システムの問題が解決されていないからだと判断し、面談を繰り返しますよということも明確に伝えてあります。
粘り強く取り組むんだという姿勢を示すことも、重要なのではないでしょうか。

Q2
メンタルヘルス不調の医師に就業制限をかけるときにはどうしたらいいでしょう? 多くの病院は、各医局で業務を分担しているため、人手不足の際には就業制限を徹底できないのではないでしょうか。貴センターでは、どのような工夫をしていますか?

 

A 健康管理室の活動が認識されているので協力してもらえる

各診療科の事情で対応に差がでるケースはあると思いますし、表に出てこないことも結構あるかもしれません。ただし当センターでは、健康管理室の活動が認識されてきているためか、今までメンタルの問題で対応を依頼され、当該医師を精神科受診に繋げることや就労制限をかけるよう要請した場合に、徹底できなかったことはありません。

ご本人にきちんと説明すれば了解されることがほとんどですし、それに対して診療科の部長からも協力的に対応していただけること多かったと思います。

Q3
すべてのポジションの医師が「働きやすい」と思えるような職場環境づくりをどのようにしていますか? 巷では、「研修医は保護されているけど、管理職は長時間の過酷な労働に曝されている」などの噂もあるようです。皆が働きやすい、ブラックではない環境づくりはどうしたらできるでしょう?

 

A 組織ぐるみ、かつ個人も強い意志を持って取り組む

働きやすい環境作りに関しては、当方も道半ばであり、なかなか進んでおりません。なので、どうしたら課題を解決できると思うかという視点からお答えします。

すべてのスタッフが働きやすいと思う環境を作るには、病院幹部も含めて、あらゆる職種の個々のスタッフたちも、その目標を共有した上で、それぞれの立場で日々の勤務から目標実現にむけて取り組む必要があると思います。個人が努力するだけではなく、組織ぐるみで、しかもひとり一人も強い意志を持って取り組まなくてはいけないということです。

私個人としては安全管理指導者の立場と産業医の立場をリンクさせて、安全な職場環境の創造が働きやすい職場作りに直結するという考えで、安全管理の業務にも取り組んでいます。

Q4
医師の応召義務がある中で、従来からある「主治医は病棟や病院に張り付いて、患者を診なくてはならない」という文化・バックグラウンドはどうなっているでしょう? 変わっているでしょうか、いないでしょうか? 変わっているとしたら、どのように変わってきたでしょう?

 

A ゾーンディフェンスを機能させることが不可欠

数値的なモニタリングしているわけではないので、難しい質問ですが、私の主観でお答えします。
勤務時間の問題をクリアにするためには、診療科がチームとして機能することが不可欠となります。マンツーマンディフェンスからゾーンディフェンスに切り替える必要があります。

しかしゾーンディフェンスを機能させるためには、スタッフ全員が自分の担当をきっちり線引きするのではなく、全体を俯瞰しながら、他のスタッフのフォローに入るなど、チームのために、自主的にリーダーシップを持って行動(診療)することが重要です。
その考えの根幹は「張り付いて」とまでは言いませんが、より広く責任感をもって患者を診るという意味では同じか、それ以上だと思います。

たとえば、自分の担当時間が過ぎれば誰かほかのスタッフが引き継いでくれるから任せてしまえばいいという気持ちは、安全な医療の提供という最大の目的に対する脅威となりかねません。担当時間が過ぎたらもう、自分には関係ないでは困る。
なにごともバランスをとることが重要ですが、なかなか一朝一夕には難しいと考えています。

これはあくまでも個人的な印象ですが、上級医はご指摘のようなバックグラウンドで勤務してきている一方で、若手は早く帰るよう促される文化で育てられていますので、Q3のような“巷の噂”が出ることにつながっているような気がします。
文/木原洋美

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