557c644f 3d14 477f a0db ef270e625204連載・コラム
2019年01月13日

無給医問題ついてぼんやり考えること。/Dr.まあやの「今日も当直です」 第27回

平成が終わろうとする10月の末、医学部女子不正入試問題に続いて話題となったのが「無給医」問題。NHKがニュースで大々的に取り上げる前から、joy.netでも緊急アンケートを実施。記事として取り上げかなりの反響がありました(参考:医師たちが考える「無給医」問題)。この問題について、極寒の釧路で当直中の元無給医、Dr.まあやに聞きました。

医局では不眠不休無給・・・。外勤バイトで生活を支える日々。

無給医問題、まさかこんなに盛り上がるとは。ワタシがまだ大学病院でレジデントで病院中を走り回っていた無給医時代は、世間じゃ誰も気にしてくれなかったのに・・・。
そりゃあワタシも文句言いましたよ…!だって、レジデントで休みなく働いているワタシより、大学病院の夜間事務の方が給料よかったんですよ。その情報を某週刊誌で見て、医局会で教授やスタッフの先生に見せに行きましたからね(笑)!そうしたら「いや〜、仕方ないだろ〜」なんて言われて。

ですが、無給医なんて言ったらまったく無収入に聞こえてしまいますが、そんなことではもちろん生活できません。私立大学の場合、教授や准教授、助教などスタッフ以外の医局員は、医局では給料は貰えませんが(大学職員ではないため雇用契約が発生しない)、外勤バイト先を紹介してもらえます。

私の医局では、レジデントだと、週に1日外来、平日当直、月1回土日当直、と回数は決められていました。その中には地方の病院も含まれていますから、この制度で地域医療が成り立っていると言える側面もあります。ワタシが釧路に行き始めたのはこのバイトがきっかけです。大学の勤務医で、バイトをしていない医者はいないと思います。要するに、大学病院では無給だけれど、稼ぎ口はあるのです。もっとも、レジデント時代にお金を使う時間なんてないんですけどね・・・。ワタシは家賃●万円のボロアパートと病院を行き来するだけの生活でした。

無給医問題は、医師の働き方だけの話ではない。

都内のクリニックや病院でも人手の足りない外来や当直は外勤バイトです。医師不足の地域の医療にとっては、この仕組みがないと、患者さんが受診できる科目が限られるどころか、場合によっては地域に病院がなくなる可能性もあるわけです。医師にとっても、生きていくための大切な収入源です。

もし、外勤バイトと同じだけの報酬を大学病院からもらえるとしたら・・・。大学病院の医師の人件費は一体どのくらいになるのか?その財源は?医療費を上げるのか?解決しないといけない問題は、単純ではなく、もっともっと複雑で深く問題が広がることでしょう。

バイト枠も大学規模によって差があるようです。大学院に進学する場合、無給どころか授業料を払うことになり、無給だと子どもを保育園にも入れられないらしいですし・・・。これから医師になろうとする人は、そんな細かい実情を把握し、医師としての働き方をイメージしておくことはとても重要だと思います。

ワタシの場合、医学部5年生のときに、都内の某病院を見学した際、ベテラン脳外科医に、「組織が大きくなればなるほど、働き方が選べる」と言われて今の医局を選択しました。ありがたいことに、医局OBの先輩方の病院で外来や当直をやらせてもらえていて、本当に助かっています。今、デザイナー業と二刀流でもなんとか生きていけていて、あの言葉に従ってよかったとつくづく・・・。

無給医は、正直きつい部分があります。現場も、これが最適ではないと思っているはずです。それでも今の形を続けるしかないと思っているのは、それだけの背景があります。難しい問題だなぁ・・・なんて、ぼんやり考えながら、ワタシは極寒の釧路で平成の終わりと新しい年の始まりを迎えたわけです。ワタシが釧路に行くことで、釧路の病院の先生は、地元に戻り、家族とお正月を過ごせるかな〜っと。そういうことで成り立っている世界もあるんですよねぇ。

Dr.まあやの初のエッセイ本!

『カラフルデブを生きる
ーネガティブ思考を強みに変える女医の法則40』

(セブン&アイ出版)

コンプレックスがあるからこそ人は成長できる。
挫折や劣等感が、たくましく生きていくバネになる。

脳外科医×デザイナーとして、人生をカラフルに生きるドクターまあやのエネルギーの源に勇気をもらえる一冊。

 Dr.まあや(折居麻綾先生)

1975年東京生まれ、岩手育ち。岩手医科大学卒業後、慶應義塾大学病院で研修を終え脳神経外科に入局。2010年にかねてから夢だったファッションデザイナーの道に挑戦しようと日本外国語専門学校海外芸術大学留学科に入学する。翌年にはロンドンのセントラル セント マーチン カレッジ オブ アート アンド デザインに約2年間留学しファッションデザインの基礎を学ぶ。帰国後は事務所『Dr.まあやデザイン研究所』を設立しアーティスト活動をスタート。現在は釧路孝仁会記念病院、東京・小平市のあかしあ脳神経外科の院長として非常勤勤務している。 

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■イラスト/Dr.まあや 構成/ふるたゆうこ