1e555528 f0ea 414e b06e dd2400d2d3dd医療トピックス
2019年01月27日

医学部入試不正発覚から半年、女医たちがあげてきた声を振り返る――医療現場のひずみは解消されていくのか

東京医大入試における女子受験生一律減点が発覚したのが2018年8月2日。入試でのフェアネスを覆す信じがたい事態が、その後続々と全国の医学部入試で発覚した。その背景にあるのは、医療現場の過酷すぎる働き方。その根本課題はあまりにも大きく、抜本的な改革はすぐには断行できない。そのため、「医療システム」の問題が「性差」の問題にすり替えられてきたわけだ。

一連の入試不正を契機に、ブラック化を極めた医療現場の働き方にも世間の関心が向くようになった。しかしながら、2019年1月11日に開かれた「医師の働き方改革に関する検討会」では、地域医療の提供体制によっては医師に「年間1900~2000時間」の時間外労働を容認するという時代と逆行するような驚くべき方針が示されている。果たして、医療現場で放置され続けてきたひずみは解消されていくのか。改めて警鐘を鳴らすべく、一連の問題発覚から現在に至るまで、joy.netに寄せられた当事者たる「女性医師」たちの声を紹介する。

緊急速報:東京医大入試での女子一律減点、医師たちはこう考える。
https://www.joystyle.net/articles/622

東京医大の女子受験生差別が発覚した当日に緊急アンケートを実施し、翌日に速報を発表したこちらの記事差別の当事者たる女性医師たちの65%が一定の理解を示したことはNHKや全国紙など各種メディアでセンセーショナルに報じられた。しかしながら、編集部が強調したいのは、女性医師たちが過酷な環境に身を投じ、どうしようもない現状に直面する中で無力感を覚えた結果、差別を消極的に容認せざるを得ない状況に追い込まれているということ。ある意味で、マイノリティが体育会系男性社会で生きていくための生存戦略なのではないだろうか。

続報:東京医大問題への医師の声――医師たちが医療現場で直面した女性差別の実態
https://www.joystyle.net/articles/624

入試差別だけでなく、医学部でも、医師となった後も女性医師は差別に直面し続ける。女性医師たちからの体験談・エピソードを紹介した上記記事。時代錯誤な事例の数々に閉口しながらも、異常な状況が常態化することでそれが常識となってしまう医療現場のゆがみが見えてきた。


緊急寄稿:消化器外科医ママ、さーたりさんが考える東京医大問題
https://www.joystyle.net/articles/628

消化器外科医で3児の母、漫画家でもあるさーたりさん。差別をされてきたドンピシャクラスターの立場から感じることをマンガ&エッセイで寄せてくださった。

「(ショックを受けたのは)私自身も無意識にそれを差別だと思うに至らず『そういうものなんだ』と受け入れ染まっていた事実、にです」

 

「大学側の意見も『理解はできる』・・・理解はできる、かもしれないけど、やっぱりそれに賛同してはいけない。共感しちゃいけない。本当は理解だってしたくはない。考えれば考えるほどこの問題は根強く、胸の奥の暗い澱みが晴れません」

葛藤する心情の吐露に多くの女性医師から共感の声が寄せられた。

 
医師は長時間労働で当たり前なのか? 医師120名による「医師の働き方改革」への5つの提案
https://www.joystyle.net/articles/631

差別を訴えるだけでは建設的な議論は進まない――ということで、医師たちに「医師の働き方改革に必要なこと」を緊急調査。120名もの医師から意見が寄せられた。その結果、「急性期機能を持つ大病院の集約化」「複数主治医・交代制」「医師以外の職種へのタスクシフティング」「当直やオンコール対応における適正待遇・待遇改善」「患者意識変革」という5つの打ち手が見えてきた。

84.2%の医師が反対!「医師の残業規制は緩く」の方針へのドクターたちの意見
https://www.joystyle.net/articles/633

医師の過酷な働き方に世間の関心が高まる中で、2018年9月初旬に厚労省から示されたのが「残業規制、医師は緩く 救急・産科は上限見送りも」との方針(日経新聞でこの記事を目にした編集部はあまりものショックに久々に泣きました・・・)。改革への気運に水を差す状況を何とかしたく、この方針への医師への意見を募ったのが上記記事だ。


週刊現代「女性医師の手術はいやだ」を女医たちはどう受け止めたか
https://www.joystyle.net/articles/636

女性医師を取り巻く状況に世間の注目が集まる中でリリースされた女性差別甚だしい週刊現代記事。「女性は感情的」「生理があって体調に波がある」「とっさの判断が苦手」と勝手なステレオタイプで女性医師をディスる記事を相手にするのもどうなのか・・・と思いながら、女性医師へ意見を聞いたのが上記記事。女性医師のほうが劣るというエビデンスはないと一刀両断し、偏見に凝り固まった人々に憐れみを示し、患者さんを振り回すことに断固とした抗議を示した彼女たちの高いプロフェッショナリズムと矜持に胸のすく思いがした。


医師たちが考える「無給医」問題
https://www.joystyle.net/articles/650

一般の社会では考えられない大学医局の「無給医」の存在。有給ポストが限られていること、臨床に携わる立場でありながら研鑽の身でもあること・・・様々なエクスキューズがありつつも、異常であることには変わらない。戦々恐々としながらもその実態を取り上げ、医師たちの声を紹介した。NHKでも特集が組まれ、大きな反響をよんだ。

私がメディアに出演した理由――医学部入試差別、無給医問題の当事者として
https://www.joystyle.net/articles/652

医療現場の女性差別、無給医問題の当事者として、NHKやTBSなど各種メディアに不利益を承知で出演されたさーたりさん。「内側からはきっと変われないこの医学界を外側から力ずくで変えてもらいたい」との思いを吐露。そして、なんと3児の母として大学病院への復帰も発表。マゾっぷりに(!?)多くの女性医師からエールが寄せられた。

無給医問題ついてぼんやり考えること。
https://www.joystyle.net/articles/664

脳外科医デザイナー、Dr.まあやからは「無給医」の存在があるからこそ成り立っている地域医療の現場についての指摘が。「現場も、これが最適ではないと思っているはずです。それでも今の形を続けるしかないと思っているのは、それだけの背景があります」との言葉に、医療現場の抱えるあまりにも大きな課題・ひずみを改めて実感させられた。

折しも「医師の働き方改革に関する検討会」真っ只中。まだまだ、医療現場のひずみに対して、医師個人に負担を強いる状況に改善の兆しが見えないのは冒頭にも指摘した通りだ。でも、それを嘆き、批判しているだけでは何も変わらない。joy.netにできることは、等身大の医師たちの声を集め紹介していくこと。そして、課題を克服しようとする事例をケーススタディとして紹介していくこと。

現在は、医師の働き方改革の現場を追う各種レポート記事を取材中。小児救急の現場、そして人気民間病院における産業医活用、さらにはメディカルテクノロジーによる働き方改革の現場も追っている。2024年から始まる医師の残業規制までの猶予期間が医師の働き方を取り巻く課題を根本的に解決する最初で最後のチャンスだと思っているから――

 文/joy.net編集部