8253f681 c3e1 4387 8230 de07101959b8子ども・暮らし
2015年11月16日

徹夜勤務で極度の寝不足、頭は常にボンヤリ……。
15分の仮眠で救われる「睡眠マネージメント」とは。

Joy.netで注目度が高かった記事『女性医師たちの生声で振り返る「嗚呼、研修医時代」 ――3日帰れなくて当たり前! 肉体疲労極まれり編』にもあったように、研修医時代を含めて、医師たちの睡眠時間は悲惨な状況です。「当直明けの日勤で30時間以上寝ないことがよくある」「オペ後は頭が冴えて家に帰ってもなかなか寝付けない」「1週間のほとんどが30分程度の細切れ睡眠の連続」etc.この負の連鎖から抜け出すために、睡眠のプロフェッショナル、作業療法士・菅原洋平先生が今すぐに実践できるスリーピングメソッドを伝授します。

こんなミスや行動に心あたりありませんか?

 

●オペ中にメスやメッツェンなどをよく落とす。

●診察室の机や扉に足をぶつけることが多い。

●カルテの同じ個所を何度も読み返す。

●患者さんへの説明がいつもよりトゲトゲしい。

●夜中の当直中は必ずお菓子をつまんでしまう。

●同僚の何気ない言葉が気になりひどく落ち込む。

これらの行動は、睡眠不足などが原因で脳の覚醒レベルが下がっているというサインです。人間は20時間以上起きていると、お酒を飲んだときのような弱度の酩酊状態に近くなると言われており、自分ではしっかりしているつもりでも、脳が十分に働いていないため、ちょっとしたミスをしたり、気持ちが沈んだりとマイナスな出来事が起こりやすくなります。

 例えば「診察室の机や扉に足をぶつける」のは、からだの傾斜を感知する「前庭感覚」や筋肉の動きを把握する「固有感覚」が鈍り、脳がからだの動きを正しく把握できていないと考えられます。「患者さんへの説明がトゲトゲしい」「同僚の何気ない言葉が気になりひどく落ち込む」という精神面の問題は、脳の覚醒レベルの低下によって、喜びや怒りなど司る偏桃体が過剰に働くためです。そのほか、慢性的な寝不足により食欲中枢が刺激されて夜中にお菓子を食べ続けるなど、健康面でも弊害が出てくることがあります。

大切なのは脳が疲労しているという警告サインに気づき、睡眠が必要であることを自覚することです。「そうはいっても忙しくて寝る時間なんてない」という方がいますが、睡眠のコツを知れば、短い時間でも効果的に脳やからだを休めることができます。「あの先生、まったく寝ていないように見えるけどパフォーマンスが高い」というドクターは、上手に睡眠をとっていたりするものです。

徹夜の当直勤務を乗り切る5つの睡眠ポイント。

~当直勤務中~

ポイント1:たった15分の仮眠でも脳は休まる。

ほんの少し休憩をとろうと5分ほど目をとじるとスッキリしたような気分になりますが、これでは短すぎます。覚醒しているときに増える睡眠物質(プロスタグランディンD2)が減らず、神経伝達が抑制されたままなので判断力や思考力などが回復されません。仮眠の理想的な長さは10~15分。睡眠物質が多少減りはじめ、課題解決力が戻りじめ、緊急のコールで呼び出されたときでも、迅速に対応できるでしょう。

仮眠のとり方は大きく分けて2パターンあります。ひとつは30分以上の睡眠時間がとれて、身体の疲労を回復させたいとき。その際はベッドやソファなどに横たわり、からだを水平にして重力の影響を受けないようにします

 いっぽう、30分以内に起きないといけないときは、椅子に座り上半身が起き上がった状態で、ネックピローなどで頭を固定すると深い睡眠に入りにくくなります。目をとじるだけでアルファ波が出てリラックスできるので、隙間時間に頭の疲れをとりたいときに効果的です

 注意したいのが椅子の座ったままで30分以上眠ること。目覚めたときに頭がぼーっとすることが多いので、長めに休憩がとれるときはできるだけ横になって休むようにしましょう。

ポイント2:コーヒーを飲んだあとは“15分のうたたね”がカギ。

眠気覚ましにコーヒーを飲む方は多いですが、コーヒーに含まれるカフェインは、睡眠物質が溜まったままで眠気をブロックするだけなので、脳の疲労をとり作業効率を上げることはありません。とはいえ勤務中で寝ることができない状況で頭をシャキッとさせたいときは、カフェインの力を借りることもあるでしょう。

 カフェインの作用をしっかり効かせるためには、仮眠とセットにすることです。カフェインが脳に到達するまでに30分ほどかかり、10~15分仮眠をすることで眠気の原因物質がブロックされ、カフェイン効果が発揮されやすくなります。カフェインの効果はおよそ5時間続くと言われています。

 ポイント3:夜が明けたら、温かい飲み物と日の光で“朝”を脳に認識させる。

徹夜の当直や深夜のオンコールなどで、乱れた睡眠リズムを整えるために大事なのは朝の時間です。まずは、夜がしらじらと明け朝日が昇ってきたら、病院の外に出て強い日の光を浴びましょう。人間の生理現象として、光を感じた16時間後に眠気が起こり睡眠が設計されるため、脳に「1日のはじまり」を認識させるのに効果的です。

もうひとつは、生体リズムを司る深部体温リズムを整えるために、温かいスープなどを飲んで体温を上げておくこと。目覚めと眠りの仕組みは、深部体温が高くなると目覚め、低くなると眠くなるため、体温の山と谷をはっきりさせて質のいい睡眠に入れるように、朝に体温を上げてリズムを作りはじめます。病院内は空調がきいてからだが冷えていることが多いので、とくに意識をして体温を上げておきましょう。

 このように次の睡眠に備えてスタンバイすることで、スムーズに入眠しやすくなり、疲労回復効果も高まります。

 ~当直明け~

ポイント4:昼間は遊びに出かけて眠気をガマンする。

当直明けは「早く家に帰って寝たい」と思うでしょうが、日が昇っている時間に眠気に任せて睡眠をとるのは、生体リズムを崩す原因となります。そこで、脳疲労や体力を回復させるために質の高い睡眠をとる目的として、“睡眠圧”を利用するという手法があります。睡眠圧はゴムの伸縮と同じように、ギリギリまでゴムを引っ張り、手を放すと強い力が働くという原理。当直明けは夕方まで遊びの予定を入れるなどして眠気をがまんすることで、布団に入るとすぐに深い眠りに入りやすくなります。3時間でも深く良質な睡眠を確保できれば、疲労からの回復力が向上します。

 ポイント5:夜、頭が冴えて寝づらいときは頭部を冷やす。

長時間のオペや緊張続きの救急対応の後などは、気持ちが張り詰めたままで、寝たくても眠りにつけないことがあります。前述したように、深部体温が冷えると眠気が訪れるので、耳から上の大脳辺りを冷たいタオルなどで冷やすといいでしょう。大脳の周囲は筋肉や脂肪が少なく外部からの温度の影響を受けやすいので、比較的すぐに効果を実感できるものです。また、仙骨と足首に10秒ほど温かいシャワーをあてると、全身が温まり放熱器官から熱が放出され深部体温が下がり、眠りへと誘ってくれます。

 私も病院に勤務していましたので、先生方の万年睡眠不足の現実を見てきました。とくに研修医の方たちは休みの日でも他病院にアルバイトに行くので、明らかに睡眠不足が慢性化している状況。そんな過酷な環境だからこそ、睡眠のセルフマネージメントすることでパフォーマンスが上がり、生き生きと仕事に集中できるのだと思います。普段の生活のなかで簡単に取り入れられるのでぜひ実践してみてください。

作業療法士 菅原洋平先生

国際医療福祉大学卒業後、作業療法免許を取得。民間病院精神科勤務後、国立病院機構にて脳リハビリテーションに従事。脳の回復には睡眠が重要であることに着目して臨床実践をする。静岡県にユークロニア株式会社を設立し、企業を対象に生体リズムや脳の仕組みを用いた人材開発を行う。著書に『思いつきで行動してしまう脳と考えすぎて行動できない脳 頭の使い方を少し変えたら、自分の弱みが武器に変わった!』(メディアファクトリー)『誰でもできる!「睡眠の法則」超活用法』(自由国民社)などがある。

 

菅原洋平先生の睡眠メソッドが分かる著書
朝昼夕3つのことを心がければOKあなたの人生を変える睡眠の法則(自由国民社)

起床から6時間後に5分間目をとじる、
目覚めのコーヒーは飲んだあと仮眠するといった、毎日の生活で簡単に取り入れられる
睡眠の法則を紹介。
睡眠のリズムが整えば、
体調不良やイライラ、
仕事の非効率などが改善されます。

 


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