136ec504 af10 476c b2e8 227104b2b2b6医療トピックス
2015年11月12日

他人事では決してない!?
女性医師にこそ正しく知ってほしい、HTLV-1ウイルスのこと

全国で感染者は100万人以上。HTLV-1ウイルス

HTLV-1というウイルスについて、ご存知だろうか。
がんの中でもとりわけ手強い難治性のがんとして知られ、希少がんとも言われる成人T細胞白血病(ATL)や、神経難病であるHAM(HTLV-1関連脊髄症。平成21年より厚生労働省難病対策疾患に指定)などを引き起こすウイルスとして知られるHTLV-1ウイルス。平成20年度の厚生労働省の調査によれば、全国で約108万人のHTLV-1感染者がいることがわかっている。

かつてはHTLV-1感染者およびATL、HAM患者は九州地区に多く見られたが、大都市部への人々の移動などに伴い、現在では関東や関西の大都市圏でも増加傾向にある。「風土病」として置き去りにされてきた感のあるHTLV-1ウイルスに対して、国もHTLV-1対策推進協議会を設けて対策に乗り出すなど、HTLV-1ウイルスを取り巻く環境は近年大きく変わってきている。

こうした変化を評価する一方で、警笛を鳴らすのは、「日本からHTLVウイルスをなくす会 スマイルリボン」の菅付加代子さん。平成15年にHAM患者会である「アトムの会」を立ち上げ(HAMの難治性克服研究事業対象疾患の指定に貢献)、続いて、平成17年にHTLVウイルスをなくす会を設立した。平成24年にそれらを包括するかたちのスマイルリボン体制へと移行し、活動を進展させてきた。

母子感染だけではない

「平成23年に協議会が設立され、妊婦健診にHTLV-1抗体検査が加わりました。喜ばしいことですが、母子感染予防ばかりが注目されるようになりました」と、自身HAM患者である菅付さんは語る。HTHV-1の主な感染経路は、母乳からの母子感染、パートナーからの(主に男性から女性への)水平感染、輸血による感染があるが、1986年以降、血液検査がなされるようになったため、輸血による感染は実質なくなった。「母子感染予防対策の強化で、‘次世代への感染は予防できた’と満足しているようなところがあります。しかしながら、パートナーからの水平感染も考えなくてはならない問題です。また、子どもへの感染が予防できたとしても、母親がキャリアであるという事実は変わりません。感染を告げられたキャリアママたちのサポート体制が十分とは言えないのが現状です」と口調は厳しい。

スマイルリボンの一環として、「キャリアママに寄り添うサポートを」と2011年にキャリアママの会である「カランコエ」、昨年にはキャリアの人々も巻き込んだATLの患者友の会「ミラクル」を始動させた。

ATLの患者会は長年の悲願。というのも、ATLには急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型と4つの型があるが、くすぶり型や慢性型でとくに症状がない状態では経過観察となる一方、急性型やリンパ腫型、急性転化型になると急激に病気が進行するため、患者会活動どころではなくなってしまう。家族の会はといえば発症すると家族も必死、遺族の会はといえば「あんなつらい体験はもう思い出したくもない」と、患者会はもとより家族や遺族の会を立ち上げることも叶わなかった。そんな中、元宮城県知事の浅野史郎さんや「なんでも鑑定団」のメンバーとして知られる安河内眞美さんなど、骨髄移植により発症から5年以上日常生活を送れる人や、モガムリズマブのような新薬の登場で劇的な治療効果を得られる人など、ATLにも希望の光が見えてきた。しかしながら、依然手強い相手であることに変わりない。考え抜いた菅付さんは、2014年、キャリアの人々にも呼びかけ、ATLの患者友の会「ミラクル」をスマリルリボンの活動としてスタートすることを決意した。「骨髄移植の後、小さな子を残して逝ってしまったスマイルリボンメンバーの‘患者会をつくる’という夢を実現できました。やっと約束が果たせました」と菅付さんはほっとした表情を浮かべる。

女性視点の対策を

取材をお願いした10月は、スマイルリボン活動の本拠地である鹿児島を遠く離れ、国立病院機構新潟病院で、自力での歩行のためにホイストの臨床試験を受けられている真っ最中。「普段車椅子のHAM患者には、歩く練習は本当に大変です」と言いながらも、「新潟病院は聞きしに勝る素晴らしい病院。長期療養中の難病の患者さんが‘ものすごく幸せ’とおっしゃるくらいなんですよ。スタッフの方々の意識も徹底しているし、病院食もとってもおいしくて」と、入院生活を満喫されている様子。

「HTLV-1対策には、データ偏重の男性視点ではなく、女性視点が求められています。‘母子感染が何%予防できた’といった単なるデータ上の成果ではなく、母乳をあげられない辛さ、いつか発症してしまうかもしれないというキャリアママたちの不安に寄り添うこと。女性医師の皆さんにこそ、HTLV-1について正しく知って、患者さんやキャリアの方々に向き合ってほしいのはもちろんですが、パートナーにも伝えてほしい。当事者視点で一緒に考えてもらえたら」と菅付さん。国や医師も巻き込んで、着実に社会を変えてきたスマイルリボンの快進撃。最終目標は、「新薬、ひいてはHTLV-1予防ワクチンをつくる」だ。

HTLV-1に関するイベント情報

■ロータリーの地域密着型社会奉仕
「HTLV-1感染症の現状について」

平成27年11月15日(日)14時~16時30分
よかセンター 多目的ホール
(鹿児島市中央区10番地(キャンセ8F)
お問い合わせ:099-254-1117(鹿児島県南口ロータリークラブ事務局)

■鹿児島県主催「あなたにも知ってもらいたい!HTLV-1のこと 
~ヒトT細胞白血病ウイルスとは~」

平成27年11月22 日(日) 13時30分~15時40分
場所霧島市国分総合福祉センター(霧島市国分3丁目33-10) 
お問い合わせ: 099-800-3112

■NPO法人スマイルリボン設立10周年記念事業
HTLV-1講演会「知っていますか?HTLV-1のこと‼」

平成27年12月26日(土) 13時30分~
ふくふくプラザ ふくふくホール
(福岡市中央区荒戸3-3-39)
お問い合わせ:099-800-3112

■文 今村美都


 

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