Adf49be1 c41e 4f32 bb6c 25d4cb52fa83ワークスタイル
2015年12月07日

女性医師キャリア支援の新しいカタチ
10時開始で週1回4時間から可能!
フローレンスが取り組む病児保育の往診ドクターとは

訪問型病児保育をメインに小規模保育、障害児保育、ひとり親支援など「子育てと仕事」を取り巻く様々な課題解決に取り組んでいる認定NPO法人フローレンス。2015年夏に放映されたTBSドラマ『37.5℃の涙』のモデルとしても知られる同法人では、訪問型病児保育と往診を組み合わせた日本初の細やかなサービスを提供しています。そこで活躍されているのは全員女性医師、しかも子育て中の女性医師が大多数。それを可能にしているのは、柔軟な勤務体系ときめ細かなフォロー体制、そして研修体制にあるとか。そこで、事務局長・宮崎真理子さんに同サービス立ち上げの背景や女性医師の働きやすさ実現の工夫について伺いました。 

認定NPO法人フローレンス 
2004年に「地域の力によって病児保育問題を解決し、子育てと仕事を両立できる社会をつくりたい」との考えのもと駒崎弘樹氏により設立。日本初の共済型・訪問型病児保育サービスを展開。
業界最多の保育件数、当日8時までの予約で100%対応、設立以来10年間無事故といったきめ細やかで質の高いサービスに定評がある。その他にも待機児童問題解決のための小規模保育園や
極度に不足している障害児保育園、全国初の障害児訪問保育の運営など共働きやひとり親の子育て家庭を支援する各種事業を展開している。 

 

往診ドクターとは
病児保育サービス利用者の自宅への往診サービスで、小児科受診済のお子さんの経過診察を行う。また、必要に応じて処方箋の発行や鼻吸い、吸入、検査(インフルエンザ、溶連菌)、登園許可証の作成も実施。所属は提携クリニック、サービス提供・オペレーションはフローレンスという形態。週1回・4時間から勤務可能で現在7名の女性医師が勤務している。


―― 訪問型病児保育で往診サービスを提供という日本初の試みを開始された背景について教えてください。

宮崎さん
2012年冬から往診サービスを開始しています。病児保育サービス自体は2005年から行っていましたが、その中でお子さんの病気の治りを後押しするためにもっとできることがあるのではないかという思いが強くなっていったんです。というのも、保育スタッフは医療行為ができず、鼻吸いも吸引もしてあげられない。鼻がつまって苦しそうにしていても、ふいてあげることしかできないんです。簡単な医療行為をしてあげられれば、もっと回復も早くしてあげられるのに・・・・・・そんなもどかしい思いを積み重ねる中で、この問題を医療と連携することで解決できないかと思い至り、サービス設計に取り組みました。

―― 女性医師による往診サービスとされた理由はどんなところにあるのでしょうか。

宮崎さん
当初は個人のお宅に訪問して病気のお子さんを診るわけだから、女医さんのほうが親御さんも安心かなという程度の思いでした。しかし、実際にお会いした先生方から女性医師の働きにくさ、出産後も仕事を続ける高いハードルについて伺う中で、その過酷な勤務環境がリアルに分かってきて愕然としたんです。医学部卒業後11年では女性医師の就業率は76.0%しかないというデータ(*)にも衝撃を受けましたね。そこで、「女性医師が継続的なキャリアを築くことがこんなにも難しいという現状があるなら、私たちが往診ドクターの勤務設計を工夫することで貢献できることがあるのではないか。女性医師の継続的なキャリア構築を助ける選択肢の1つを提示することもできるのではないか」と考えたのです。そんなわけで、病児保育のサービス向上と女性医師のキャリアサポートという2つを解決するものとして女性医師による往診サービスを設計することとなりました。

―― 女性医師の働きやすさを実現するために、どのような工夫をされているのでしょうか。

宮崎さん 
基本的な業務フローは以下に示す通りですが、働きやすさの実現のために大きく3つの体制を整えています。それは、①先生のご都合に合わせた柔軟なアレンジ、②お子さんの急な体調不良といった突発的な事態へのフォロー体制、③ブランクのある先生への復職サポートとなります。

往診ドクターの1日の流れ

10:00   フローレンス飯田橋オフィスに出勤
        当日の往診先を確認後出発
        ※往診メンバーは、ドクター、ドライバー、場合によりドクターサポート
            担当者も同行となります。

10:30   往診スタート
       往診数は1日当たり5~8件ほど。
       基本的に前日までに小児科の受診が済んでいるお子さんを診察。
       鼻吸い、吸入、検査(インフルエンザ、溶連菌)といった
       医療行為も可能です。
       場合によって処方箋発行、登園許可証の作成も実施します。

       終了後、電子カルテ入力

16:00   最後の往診先の最寄り駅で解散
        ※基本的に毎日往診カーは2台出動。曜日によっては、3台の場合もあります。

 

先生のご都合に合わせて往診ルートを柔軟にアレンジ 

まず、「①先生のご都合に合わせた柔軟なアレンジ」については、勤務開始時間や終了時間などのご希望をお申し付けいただければ、それに合わせた往診ルートのアレンジをしています。たとえば、14時までしか勤務できない日があればそれに間に合うようなルートを設計。その代わりにもう1人の往診の先生に往診先を増やすことができないかを相談するなどして全体の調整をしています。もちろん、それも難しい場合は往診先を絞り込むこともありますが、みなさん同じような状況の女性医師同士なので持ちつ持たれつで相談にも応じていただいていますよ。

なお、前提として往診サービスはフローレンスの病児保育をご利用いただいている方に無料で提供しています。自宅での病児保育に加えて往診も利用したい方の希望をとっていますが、必ずしも毎日全てのご希望に応えられるわけではありません。そのため、ドクターと作成した優先度に応じた基準を用いて事務局で往診アレンジを行い、ドクターに最終確認をとっています。発達支援プランをご利用の障害をお持ちのお子さんや既往歴のあるお子さんは必ず往診にまわるようにしています。

万が一、勤務当日にお子さんが体調不良になった際も安心

次に、「②お子さんの急な体調不良といった突発的な事態へのフォロー体制」ですが、これは本当に働くお母さんなら皆さん気になるところですよね。そこで、万が一の際にはフローレンスの病児保育・一時保育サービスを安価に利用いただけるという体制をとっています。実際、現在ご勤務いただいているママさんドクターの皆さんにもご利用いただいていますし、お子さんの体調不良時のリスクヘッジができるのは本当に助かるとのお声もいただいています。ただ、それでもどうしても当日の勤務が難しくなる場合もありますよね。そういった際は、当日ご勤務予定の他のドクターとの往診先調整、当日勤務の入っていない先生への勤務依頼などで調整しています。そこは事務局の腕の見せ所ですね。7名の女性医師にご勤務いただいていることや、困ったときはお互い様の関係性、また往診ルートも毎日複数ルート出ていることから、幸いにして1ルートも往診に出られず休診といった事態はこれまで一度も起こっていません。


>>女性医師に強い! ライフステージに合ったお仕事探しは『Dr.なび』

OJTや外来サポートからスタートできるから
ブランクがあっても始めやすい

「③ブランクのある先生への復職サポート」については、提携クリニックで外来サポートに入っていただいたり、他の往診ドクターに1か月程同行してOJTで学んでいただくといったフォロー体制をとっています。実際に育児でブランクのあった先生にもご勤務いただいていますが、「仕事復帰したくても、ブランクがある状況では怖いので、まずはサポートから入るというのは良いウォーミングアップになった」との声をいただいています。そういった臨床復帰の過程に携われるのは私たちとしてもとても嬉しいですね。

また、往診ドクター同士、月1回勉強会兼ランチ会を開催しています。ケース共有や、往診サービスの改善に向けたディスカッションを行い、学び合いやサービス向上に繋げています。実際の往診業務ではドクターは1人ですが、こういった場があることで、サービス力UPはもちろん、連帯感、チーム力を高められているように感じます。ドクター同士もお互い似通った立場にあるので、打ち解けるのも早いですね。

―― 往診ドクターとして勤務された先生方のその後のキャリアはどのようなものですか。

宮崎さん
ブランクのあるなしに関わらず、様々なキャリアを築かれています。往診ドクターで臨床復帰の自信をつけて常勤医として転職された方、研究したいと留学された方、ご自身のクリニックを開業された方など本当に千差万別。しかも、面白いことに往診ドクターとしての勤務当初に描いていたキャリアとは異なる道に進まれる方がほとんどなんですよ。例えば、開業された先生は、もともとは大学に戻って研究がしたいとおっしゃっていましたね。往診ドクターとして仕事と育児との両立を可能にしたことで、当初は予定していなかった2人目、3人目を産んでは往診ドクターに戻ってきてくださる先生もいらっしゃいます。そんな先生方のキャリアもライフも含めた節目に立ち会えるのは嬉しいですね。ポジティブな変化を間近に見るにつけ、何かを続けていればそこから新しい気付きが生まれ、道は広がっていくんだなと実感します。

―― 現在の募集状況についても教えてください。

宮崎さん
引き続き、往診ドクターは募集中です。現在は7名の女性医師にご勤務いただいていますが、往診サービスの拡充のためにもさらに体制を強化したいと考えています。お子さんへの診察となりますが、小児科に限って募集しているわけではありません。実際、現在も内科や耳鼻科の先生にもご勤務いただいておりますので、ご興味をお持ちいただける場合はこちらの募集要項をご覧のうえお気軽にお問い合わせください。

―― 最後に女性医師の先生方へのメッセージをお願いします。

宮崎さん
まだまだ女性医師が仕事とプライベートの両方を大切にしながら働き続けることは難しい状況かと思います。私自身、往診ドクターの先生方から話を聞くにつけふつふつと怒りすら覚えてしまうこともあるほどです。優秀な女性医師の先生方が活躍できない状況があるとしたら、それは先生方個人のキャリアにとってはもちろん、社会全体の大きな損失でもあると思います。そのため、私たちは病児保育のサービス向上と同じく、女性医師の仕事と育児や生活との両立にも寄与したいと強く願っています。女性は、出産や育児などライフイベントに応じてキャリアの比重を下げざるを得ない状況も多々あるでしょう。でも、完全に離れてしまうのでなく細くても何かしら続けている方がその後の立ち上がりは早いもの。そのための場に私たちが少しでもなれたらいいなと思っています。ライフの節目を支える場所として、私たちの往診ドクター業務をご利用いただき、その後のキャリアに繋げていただくことができればとても嬉しく思います。

* 平成18年度厚生労働科学研究「日本の医師需給の実証的調査研究」(主任研究者 長谷川敏彦)

医師の常勤求人検索はこちら➡『Dr.転職なび』
  アルバイト検索はこちら➡『Dr.アルなび』
エムステージ産業医サポート【医師向け】

ヘルスケアの今と未来がわかるWEBマガジン➡『HEALTHCARE Biz』

 

 フローレンスがモデルとなっている病児保育マンガ
『37.5℃の涙』
椎名 チカ(小学館)

 

 

 

フローレンス代表理事・駒崎弘樹氏の新刊
『社会を変えたい人のためのソーシャルビジネス入門』
(PHP新書)

 

 

 


関連記事
女性医師にとって働きやすい職場を考える①
【実録】女医たちが今、苦労していること。

女性医師にとって働きやすい職場を考える② 
多忙な女医たちが助けられた職場の制度・環境とは?