24eadc83 34a3 4388 9853 e1083d356758医療トピックス
2015年12月14日

一体、誰が得をするの?
患者申出療養制度

平成28年4月に施行が決定している患者申出療養制度。その名が示す通り、標準治療として認められていない高度な医療に対して、「患者が申し出る」ことによって、厚生労働大臣が検討し、療養が可能になるというもの。混合診療を解禁すべきとの意見から出てきた制度で、もともとは選択療養制度という名で呼ばれていた。これに対して、「選択療養制度はなし崩し的な混合診療解禁につながり、患者の経済力によって受けられる治療に格差が生じかねない」「審査期間が極めて短く安全性が担保されない」との懸念が相次いだことから、患者申出療養制度の名称に変わり、今年関連法案が通過した。

患者さんの負担増のリスク。金の切れ目が命の切れ目?!

全国がん患者団体連合会(全がん連)理事長の天野慎介さんは、患者申出療養制度について、「誰のための制度なのか、正直よくわかりません」と厳しい。「国立がん研究センターが出している未承認薬・適用外薬のリストを見ると、一か月あたりの想定で自己負担額が100万円を超えるものが7割です。患者さんの中には高額な未承認薬であっても自己負担によって使いたい人は当然現れるでしょう。もちろん、患者さん個々の思いは大切にされるべきですが、その状態が普通とされ、保険照会・適用にいたらないということになれば、その他大勢の患者さんにとっては大きな不利益が生じます。月100万円を超える薬剤費を払える患者さんがどれだけいるのか。現状の保険適用が効いている高額療養費制度下でも、月8万円でも負担が大きいといる人がいる現状の中で、ほとんどの患者さんが受けられない。つまり実質上、金の切れ目が命の切れ目ということになりかねません。そうした議論の中で、厚生労働省としても、混合診療のなし崩しにしない、患者さんの経済的負担や安全性に配慮するなど、いろいろとやってきた結果、わかりづらい複雑な制度になってしまっています。」

国立がん研究センターの調査では、保険診療と未承認薬による治療を全て自己負担で受けた場合と、患者申出療養制度を用いて治療をした場合では、治療額に数万程度しか差がないとの試算も出ている。患者にとって経済的なメリットはほとんどないと言える。ただでさえ日常の診療に忙殺される病院にとっても、新たな制度の登場は、ランニングコストという側面からも人手という側面からも歓迎ムードとはいかない。製薬企業にしても、厳密な管理の下で行われる臨床試験とは異なり、対象も容量もバラバラになることが想定される、現状の先進医療の延長のような患者申出療養制度では、デメリットが少なくない。仮に、薬の投与等を原因とした重篤な副作用や、場合によっては死亡例が出た際に、保障の問題はどうするのか、また出てきたデータをどう扱うのか。これまで以上に安全性の評価に時間がかかり、薬事承認が遅れることも考えられる。

混合診療の解禁は、削減どころか、むしろ医療費UPをもたらす?!

「患者申出療養制度には、患者が混合診療の解禁により自己負担で治療を受けるようになれば、医療費が削減されるだろうという誤解があるように思います。混合診療を解禁すれば医療費は増えるということは、アメリカなどから学べる教訓です。医療費を削減したい、今後保険診療では面倒見切れませんというのであれば、患者さんのためになどと言わず、国民全体で負担の在り方について議論を行うべきでしょう」と天野さんが代弁する通り、患者申出療養制度は、一部の可哀想な患者の話ではなく、国民全体に関わる問題だ。今後さらなる医療費増大が考えられる超少子高齢社会・日本。私たちはどこまでの医療を求め、どれだけの医療費を負担したいのか。また、次世代の子どもたちに負担させたいのか。そろそろ、視線をそらしている場合ではなさそうですよ?

■文 今村美都


 

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