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2015年12月11日

父親の介護をきっかけに常勤医を退職
ピンチをきっかけに開けた自分らしいキャリアとは――

誰しもに起こりうる状況の1つ。もし親の介護が必要となったなら――。
今回は、父親の介護をきっかけに常勤先を退職、非常勤医師にキャリアチェンジをされたマイナー外科医Y先生にインタビュー。その選択の背景や葛藤、介護との両立を適えるための仕事探しの工夫について伺いました。

専門医取得前にまさかの介護離職

父親の介護のため常勤先を退職せざるを得なくなったY先生。しかもそれは、専門医受験資格も得ていないタイミングでの事態だったという。「専門医は必ず取りたいと思っていたので、目の前が真っ暗になりました。専門医受験資格も得ないまま退職して今後どうなってしまうんだろうと本当に気がかりでした」と
振り返る。

専門医取得は絶対に諦めたくない。強い思いを胸に急遽転職活動を開始したY先生。その条件は、専門医制度研修施設、かつ介護と両立可能な勤務スタイルと非常に厳しいものだった。「研修施設であれば、常勤医師にこだわらず非常勤勤務でもいいと必死に探しました。自分でリサーチするのはもちろん、複数の紹介会社にも依頼しました」。そんな中、1つの紹介会社から提案があったのが現勤務先だった。「専門医制度研修施設であるうえ、通勤至便なエリア。すぐに紹介会社経由で応募しました。とはいえ、予め介護との両立が必要なこと、そのため勤務曜日や時間に制約があることも申し入れていましたので、面談していただけるか不安でしたね」。無事、面談となった後はとんとん拍子に話は進んだが、勤務条件の調整は難航したという。「私の制約と病院の希望をすり合わせるだけでなく、導き出した変則的な勤務条件が専門医受験資格を満たすものなのかの確認がとにかく大変でした。事情を理解くださり最大限の配慮をしてくださった病院の皆様、病院と私との間に立って交渉を進めたり、私の勤務状況で専門医受験資格は問題なく得られるか学会にも何度も確認くださった紹介会社のご担当者さま、多数の方々にご尽力いただき、ベストな形での転職が実現できたと感謝しています」。入職後には念願の専門医も取得した。

勤務と介護の両立
働き方を変えたことで得られたワークライフバランス

総合病院の常勤医師から、一般病院の非常勤勤務へ。勤務内容について想定外の状況などあったのだろうか。Y先生に聞いてみると「現在は非常勤のためオペはしておらず、外来勤務のみです。でも、総合病院での外来と今の外来とを比べても診療内容レベルはほとんど変わらないですね。クリニックならまた違ったのかもしれませんが、比較的設備も整った病院での勤務なので全く引けを取りません。」との答え。総合病院時代はオペがある日はいつも帰宅は22時過ぎ、集中する外来対応で昼食も5分、10分ですませるが常だったが、現在は以前の勤務先での外来に引けを取らない診療内容を担保しながら、無理をしすぎないワークライフバランスを叶える生活ができるようになったという。勤務に加えて介護も必要になったにも関わらずだ。

人間関係に関しても、随分柔軟になったという。「現勤務先は、常勤医2名に非常勤医3名という体制。しかも、非常勤は私より10歳ほど上の女性という環境です。そのため、疑問や質問には親身かつ自信を持って的確に答えていただけます」と良好な人間関係に満足しているとか。「もし父の介護がなかったら、そのまま総合病院に残っていたと思います。事情があったこととはいえ、勤務先を変えたことで私にとって状況は劇的に改善しました。勤務に加えて介護も必要になったにも関わらず、より人間的な生活を送れるようになったと感じています」。

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物理的にも精神的にも介護との両立をサポートしてくれるご主人

介護との両立を可能にしているのは、勤務環境の変化だけでない。Y先生の一番の理解者であるご主人の存在も大きいという。仕事に介護にと奔走するY先生をサポートし、家事も当然のこととして平等に担当してくれる姿にはいつも助けられているとか。「主人は、当直や土日勤務のない比較的安定した勤務をしています。介護のため実家に寄る私より帰宅が早いこともあるためか、普通に料理もしてくれますね。野菜と魚にこだわる日本男児。オシャレなものは作れませんが、豪快な豚汁などよく作ってくれます」。さらにはY先生のキャリアについてもさりげなく、でも芯の通ったアドバイスをくれるという。「介護で退職となった際も、専門医だけは何とかして取得しなければダメだと言ってくれました。私自身、当初は取れなくても仕方ないかなという思いもありましたが、キャリアを築いていくためには必須と真剣に説いてくれる主人の言葉を信じて従おうと奮起しました」。それと同時に、ご主人自身のキャリア同様にY先生の医師としての貢献も大切に考えてくれるご主人のスタンス、度量の大きさにも気付き、ありがたく感じたという。

そんなご主人とは、初期研修の同期同士。とはいえ、研修期間中にはお付き合いに発展することもなかったという。「主人は、国立大学出身の真面目で堅実な人。みんなでワイワイするのも得意でなく、忘年会の誘いとかも必死に断る理由を探すようなおとなしいタイプです」。初期研修後も連絡すら取っておらず「同級生の1人」に過ぎない関係性。そんな状況に変化があったのは、ひょんなことがきっかけだった。「初期研修時代の友人が結婚することになり、同期同士で連絡を取り合ったことをきっかけに主人とも会うようになりました。ちょうどお互いに近くで勤務していたため会いやすかったから一緒に食事でも…という機会が重なった感じです」というY先生。「お互い近くで働いていなかったら、その後も会うことはなかったと思いますけど・・・」と手厳しい発言をしながらも「久しぶりに会ってこれまではあまり気にも留めなかった主人の良さに気付きました。」とご自身の変化を分析する。お付き合いスタートから1年後に結婚。「初期研修という人生で最も過酷な2年間を共にしていたから、お互い人柄は熟知している。だから結婚を決めるまでにはそんなに長い時間は必要ありませんでした」。

そろそろ子どもも持ちたいと希望されているというご夫婦。ご主人からは、「もし子どもを授かった場合も、ブランクが長くなるとキャッチアップが大変だからと、出産後半年くらいを目途に週1回からでも勤務に戻っていくのが良いのではないか」との助言があるとか。土日休みのご主人に子どもを託して、外来に出ることも提案してくれているという。気の早い助言に笑いながらも「私は心配性で目の前のことをあれこれ不安に思ってしまうタイプですが、主人は先も見据えたうえで冷静にどっしり構えているタイプ。だから、一緒にいると不安な気持ちも“なんか大丈夫かな”と思えてしまいます。だから、もし介護に加えて子どもを授かることがあったとしても、この人とならうまくやっていけるんじゃないかなと思えます」。

ずっと現状維持は望まない。しなやかに描く今後の展望

介護を機に退職し、非常勤医師として新しい働き方をスタートさせたY先生。勤務に加えて介護も行う日々は、肉体的にも精神的にも負担は大きいはず。それなのにY先生からは、悲壮感も被害者意識を滲ませた言葉も全くない。「ずっとこのままのスタイルを続けていくのではなく、ゆくゆくは常勤に戻りたいとも考えてはいます。オペにも復帰したいですね」との展望を描くY先生。そこにあるのは、新しい勤務スタイルも環境も柔軟に受け入れ、メリットにフォーカスして自身の力に変えていくしなやかさだった。

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